どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

◎2020.12.02…「新コロ」小節あるいは章説らしき…

-No.2631-
★2020年12月04日(金曜日)
★11.3.11フクシマから →3557日
★延期…オリンピック東京まで → 232日
★旧暦10月20日(月齢18.9)




◆〈散〉なる〈想〉の<随>なる〈筆〉

 
 なるほど、たしかに…
 眼の上は空の広がりらしく、いっぽう、ひたひた下には海の広がりが感じられ。
 (ゴー・ツー・トラベルのつもり、ってか…)
 そう思って、見れば見慣れたそのシーンは、くたびれ抜きホンマの息抜きに、ときどき利用させてもらっている近場のリゾート・ホテルの、プールみたいな露天風呂らしく、(なぁんでぇ…)少しばかりガッカリさせやがる。

 (そんなことより、ねぇ)
 ちょいスネもどきの聞きなれた声は、浅いサンゴの海に空いた洞穴からみたいに、やや、くぐもった囁きムードに伝導されてくる。そう、どこか(アヤしげ)だ。
 (満月の潮どきでもないのにさぁ…珊瑚のメスたち産む気マンマンだょ…)
 (そのようだ、オスどもだって…)
 応えかけて、(よせやぃ)オレの下半身までウズウズしてくるとは(どーゆーことなんだょ、おぃ)。

 想いは『チコと鮫』にとんだ、けれど、海はタヒチじゃないモルディブだった。
 一帯の珊瑚群からメスたちが気をそろえ、打ち上げ花火よろしく産卵する…と、ドンピシャの狙い撃ちでオスたちが目いっぱいの射精でこたえる……
 (打ち上げ花火の〝華〟は、パッと大空に散開した瞬間でキマリ、観衆からも歓声が上がる…命の耀きはそのときかぎりさ。それにしても冬雪景色での花火、打ち上げを想いついたのはエライことだった、よな)

 そこで画面が反転する…と、まばゆい陽の射し込む海…いや空か…わからん。おだやかに揺らめく波動(風動?)は、どちらともつかない。が
 この光景には、たしかに見覚えがあった。

 おおきな閑かな陽だまり、埃ひとつなかった(見えなかった…)澄明な光の空間に、いま、オレのうごきに連れて、イノチ吹きこまれた埃のダンサーたちが身をおこし、おもいおもいに舞いたち群れ踊り、永遠にやむことを知らない(…かに想える)。
 
 ちょいと(芝居がかった)気分で、眩しげな顔をつくり、よくよく観察すれば、無数の卵だったはずの微小な丸い玉に、いまは翅が生えたり、受精に成功した精子ちゃんの尻尾の痕だろうか…なんかまで明瞭だった。

 (あのさぁ…ウソだろ)それはないだろ、とオレは、思いあまった声になってつよくコウギする。(思わせぶりも、あんまり度がすぎやしねぇか)。
 どうしようもなく気がたってくるのは、まだウズウズがのこる下半身のせいかも。
  ……………

 途端に目の前が一瞬間、真っ暗にフェード・アウト。
 ややあって、こんどは真ん中から、暁闇を左右に開くかたちで明けてくる。
 暗幕が開きかけたとき、チラと、奥に隠れ遅れたかに見えた影は、あ…い…つ…まちがいない。
 風の波をおこし、埃のごとき命の卵に新鮮の気を与え、なおたりないと感じたものか。敏捷にうごきまわる子役まで加わわって、クルクルと渦を巻き、反転させ、複雑な対流を生成する。

 ……と。
 さっきは、浅い海底の洞穴かに見えた珊瑚の谷が、いつのまにか、あの錯視の「ルビンの杯」みたいな、シルエットになんかなっちまって。その微妙な凹凸部分から始まって全体に、ホコリのダンサーたちが舞い降り、集い積もってグレーの層を成し、その結果、錯視の顔の輪郭を徐々にクッキリさせていく。
  ……………
  
 (わかるょ、その気もち、アタシだって同じ…だけどさ)
 ベター・ハーフと想ってるあ…い…つ…の、いつもの安堵にあまえた応えだった、が…。いかにも、らしく、いつもより、ずっと、くぐもってイジラシく聞こえちまう。
 (ウイルスだってセクシャルなんじゃない、〝生物〟じゃないってヒトもいるけど、〝半生物〟はないと思うし、やっぱり〝生命〟なんだし、スタイルがちがうだけ、でしょ)

 (なんかちがう気がするのも、気の迷いか)
 オレも、いちおうは言ってみながら、でもワカッテる。
 ヒトの世界じゃ「SARS-CoV-2」とか呼ばれてる。けど、オレは人前では「新コロ」、あ…い…つ…との仲では愛称「コロ」だった。
 (コロにだって感覚はあるだろし…な)
 (そだね…ヒトの匂いとか、肌のぬくもりとかは、きっと、つうじてるよネ)

 (コロのやつ、水は苦手じゃないのか)、オレは、じつは泳げない。
 (スキ、キライじゃないんでしょ。水には流される…けど、べつに溺れるってハナシも聞かないしね)、あ…い…つ…は、泳げても水を怖がる。

 ………らくに息をしながら考えてるってことは、どうやらオレたち、空と水の間に浮いてるらしい……湿度50%くらいか、うん、わるくはないな……

 (南極でも…だってさ)
 精神衛生やら社会福祉やらを学んだらしい、あ…い…つ…め、もったいぶって頷く。
 (人間がいるとこなら…だろ)
 いつもオレに分がないのは、なぜだろう。
 (コロはスキ、キライなんか言ってられないんだと思う、けど。相性のイイ、ヨクナイ、これだけはゼッタイある、よね。たとえば、だけどさ、似たもの同士とは相性ヨクナイとか…)

 (……ぅ……)、オレはこころ秘かにうなずく。
 (コロのやつは、オレとは遠巻きディスタンスでいるだろうな、きっと)
 フシギに、なにやら確信めいたものはあるのだった。それはオレの匂いか、肌のぬくもり…かも知れなかった。
  
 (コロの生き方か、否も応もなしかぁ。〈水ぼうそう〉とか〈おたふくかぜ〉みたいにゃ、子どもにはアタらないのが、せめてもイイとこ…。なら、しゃぁない、わな。いけねぇとこや、しくじりだってあらぁ…ってことだろ)
 (まちがいはダレにだってあらぁ…だもんねぇぇ!)
 あいつめ、オレをからかうとき、きまりの軽口たたいて、潮どきを告げる…潮目がかわる。

 (てめ…この…)
 むしゃぶりつく手が、むなしく空振り…で、目が覚めた。
  ……………

 できることは、オレたち、やってる。これ以上、「もっとだ」ってぇなら、筋書きくらい見せろや。
 あと…どうにもチンプンカンプンで、ノラクラ、チラクラしたのが、ざんねんながら、ほんのひと握りはいる、けどもな。それだって、柄ばっかりデカくなっても、ガキみたいに頑是ないのは、ケチな教育のツケだろがよ。

 「コロ」とのつきあい、もう1年にもなろうってのに。
 なによりドッキリは、民主主義だの自由主義だの、基本的人権だの生存権だのと言ったって、どれも、ずいぶんチンケでケチでモロすぎたもんだ。
 経済がどうの、ゴタクばっかり並べたって、つまり、民(少なくとも〝下級〟国民)の糊口ひとつ養っちゃくれない。

 政治だってなぁ、ずいぶん情けないもんだと、底まで見えちまった。徒手空拳だって一所懸命なら、まだイイって。考えなし、頭なし、指導力なし。からっきしナイナイ尽くしの空虚もなし…じゃあ、たまんない。
 「自助…自助…じょじょじょ」、コケちまう。

 専門家先生たちの「御託」だってさ。正直、初っ端の「3密回避」から「5つの高リスク場面」まで、どれほど進んだ?
 「同じことの繰り返しになりますが…」だって、5回もつづけるうちにゃ、たいがい別な思案も生まれるもんだけど、な…。
  ……………

 (メシ…だぞぅ)
 あ…い…つ…の、からかい声が呼んでる。

 (おぅ…いま行く)
 下へ降りかけて、不意に、オレはキョトンと身体が固まる。
 よくある〈気づき〉だった…が、階段をアブなく踏み外すところだった。
 (あぶねぇなぁ)
 転げ落ちないように手すりに掴まって、〈気づき〉の中身を引き出す。

 オレもふくめて日本人てのは、大筋のキホンとして慎み深く、忍耐づよく、とりあえずお上には従う…とされる、が。
 外国の人士には、「(東日本大震災のような)一大事に遭っても狼狽えず、とり乱すことなく落ち着いた佇まい」が賛嘆の目でとり沙汰されたようだ…けれど。
 (それチャウねん)オレなんか、こっぱずかしくて顔が茹で猿。
 そんなふうに見えて、じつは、あきれるくらい気が短く、キレやすく、いちど暴発したら、もう、とまらない、こころがチャッカリ同居してござる、のダ。

 そのへんの狷介固陋ともいえる民族事情を、お上の層にある人たちが、どれだけ芯から理解しているのか…不安はそこに尽きる。
 このさき長びきそうな「新コロ」サイド・バイ・サイド世相も、また然り。おとなしく耐えているようでも、どこでドカンとくるか知れない。
 オレは(くわばらくわばら)肩を竦める……