どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

※2020~21「新コロ」禍の冬シ-ズン・スポーツ / 陸上・長距離界をふりかえる〈前編〉駅伝

-No.2733
★2021年03月16日(火曜日)
★11.3.11フクシマから →3659日
★延期…オリンピック東京まで → 130日
★旧暦2月04日(月齢2.7)
※次回は、3月19日(火)の予定です※

◆駅伝…燃える

 それは毎年、冬の訪れとともに…ではあるのだけれど。
 やっぱり、俄然、熱を帯びてくるのは年末・年始。
 「新コロ」禍では、いまひとつピリッとしないながらも、やっとキタ!
 ……おそまきながら、今シ-ズンを振り返る。



全国高校駅伝(12/20)

 ロードレース盛り上がりの口火を切るのが、京・都大路を舞台に男女同日に開催される「全国高校駅伝」。
 先行する女子(第32回)が5区間、ハーフ・マラソンの距離。後を締めくくる男子(第71回)が7区間、フル・マラソンの距離でフレッシュ溌剌の走りを競った。

 結果、女子は。
 最終5区に襷リレーの時点ではトップから42秒遅れの8位だった世羅(広島)が、ケニアから留学生テレシア・ムッソーニ(3年)さんの猛烈に追い上げ、5㎞を14分37秒という驚異的な区間新記録で駆け抜けて優勝。

 男子も。
 3区で区間新・区間賞に輝く快走で首位に立った世羅。殊勲者はやはりケニアからの留学生コスマス・ムワンギ(3年)くん。
 この後をつないだ各選手もガンバって、5年ぶり5回目の男女制覇は、おみごと。

 「新コロ」感染禍での調整に、選手や関係者たちの苦労にはたいへんなものがあったろう。そんななかでも、強豪校はそれぞれにキッチリ実力を発揮。
 昨年の男女制覇で気を吐いた仙台育英は、連覇こそ逃したものの、男子は2位、女子は3位と、自力を証明して見せた。



◆ニュ-イヤー駅伝(1/1)

 陸上長距離走の、なかでも「駅伝」と「マラソン」に、これほど熱い日本の国民性というのは、国際的にはやっぱり〈特異〉なのかも知れない。
 なかでも、大学のしかも関東に特化した「箱根駅伝」(後述)人気は、その歴史・背景からしてもズバ抜けて〝別格〟の存在。

 実力的には、その上、その先をいく実業団が「オレたちにも名誉のチャンスを」と思うのも、自然な人情だろう。
 「実業団駅伝日本一」を決める駅伝の始まりは1957年(昭和32)で、関東大学の「箱根駅伝」に遅れること37年。詳しい事情は知らないけれど、ベルリン・オリンピックに出場した村社講平さんの提案というあたりからしても、「日本マラソンの父」と呼ばれる金栗四三さん発案の「箱根駅伝」を意識してのこと、マチガイあるまい。

 はじめは早春の伊勢路を舞台に、第32回(1988=昭和63)から元日(1月1日)群馬開催の「ニューイヤー駅伝」になり、45回(2001=平成13)から7区間全長100kmの現行コース。「箱根」路で勇名を馳せた選手の実業団顔見世の場にもなっている。

 ことし「新コロ」禍、テレビ観戦の注目はもっぱら、開催そのものが微妙な環境下でのマラソン代表選手の仕上がりぶり。所属先の関係で出場しない大迫傑(ナイキ)も、放送スタジオにゲスト出演してエールを送った。
 中村匠吾(富士通)は、「花の4区」で実力を発揮、3位からの首位奪取。5区では服部勇馬(トヨタ自動車)も、区間賞の好調ぶりをアピール。

 勝負は、最終7区でアンカー浦野雄平(國學院大出)区間賞の走りで富士通が優勝。2位トヨタ自動車、3位旭化成が順当に上位を占めた。
 個人的にザンネンだったのは、旭化成の村山謙太・紘太兄弟にいっときの勢い・輝やきが見られないこと……



箱根駅伝(1/2~1/3)

 昨年末の28日。
 「箱根駅伝 アメリカ大陸横断駅伝の予選会だった」という大見出しで、半ページ大の記事が東京新聞を賑わせた。
 もっとも、この記事内容なら「箱根駅伝」に詳しい方は、先刻ご承知。

 アメリカ大陸横断駅伝の発想が生まれたのは大正8年(1919)。
 日本人初のオリンピック出場(明治45年、ストックホルム大会)マラソン選手で、「箱根駅伝」産みの親でもある金栗四三(自身、下関-東京間という超長距離を走ってもいる)さんの発案だった。

 ぼくも、この話しを初めて知ったときには(ギョェ~!)でしかなく。
 サンフランシスコをスタートしてゴールはニューヨークという、超壮観ビッグ・スケールには(ウソだろ!)。
 ジョーダンなんかじゃなぃ、これには心底、魂消た。

 もっとも現実には、途中にロッキー山脈越えという壮絶難所があって(そればかりじゃなかと思うが…)結局、実現はせず。
 かつて「箱根」を沸かせた名ランナー横溝三郎(ぼくも彼の現役時代をよく覚えている、名門中央大学で4年連続出場、史上最大の6連覇に貢献、現在は東京国際大監督)さんも、「さすがに、これは厳しすぎます、私だったら遠慮したい」と。

 じつは、そのロッキー越えのイメージにも叶ったのが、「東京-箱根」間往復競走。「天下の険」を走破して世界に羽ばたけ」というメッセージだった…というんですから、(マイッタな…)頭ぽりぽり。
 そんな幻の「アメリカ横断駅伝」発想の賜物、翌くる大正9年(1920)に第1回「箱根」がスタートしてます。

 そうして迎えた今年「新コロ」禍、「沿道での応援はやめて」という特段のお願いつき、第97回「東京箱根間往復大学駅伝競走」の号砲は鳴った。

往路(2日)

〇1区(大手町-鶴見21.3㎞)
 スタートのヨシ・アシはもちろん大事なのだ…けれども。
 それよりもやはりトータル(総合力)の力量アップ。プラス、実力者エースと「山登り」スペシャリストの、チーム牽引力にかかってくる。
 駅伝も長距離、しかも2日がかりの大勝負「箱根」ともなれば、なおさらで。監督は、区間ごとの特性にあわせた選手の配置に苦心させられる。

 ことし97回大会の1区トップ通過は、予選会を8位通過で登場した法政大(鎌田くん=3年)。〝波瀾〟の展開を予感させ。しかも、トップから最下位通過までにかかった時間わずか2分6秒差という、〝混戦〟模様を同時にうかがわせもした。
 強豪校では、駒沢大が15位と出遅れ。

 ビックリしたのは沿道の観衆。今大会は「応援したいから、応援にいかない。」との緊急告知のもとに開催され、だからボクも往路ゴールの箱根へ出掛けるのを控えたわけだが。(それはない…だろ)状態。主催者側の発表ではふだんの半分以下とのことだったけれども…???…。

〇2区(鶴見-戸塚23.1㎞)
 「花の2区」は、いまも「流れにのるか、流れをかえるか」の戦略区にはちがいない。…が、「2区だけが花じゃない」時代は確実に変わって。
 ことしは東京国際大のイエゴン・ヴィンセント(2年)くんが痛快に走り抜け、今大会唯一の区間新(大会MVP)で1区14位から一気にトップへ。
 他の大学も、外国勢がここは実力の魅せどころ。注目された駒大の田澤(2年)くんは、なんとか流れを元に戻すのが精一杯。
 強豪校では、青山学院大が6位から13位に、早稲田大が5位から10位へ。また、1区でトップだった法大は急ブレーキで16位に沈んで…。やっぱり混戦模様。

〇3区(戸塚-平塚21.4㎞)
 ここでは、2区を3位通過の東海大がルーキー石原くん区間賞の殊勲でトップへ。2位創価大は1区からの2位をキープして一躍、注目株に。3位は8位から上がってきた駒大。東国大は4位に後退。
 一方、往路および復路までの見とおしを立てておきたい、この区間。ブレーキつづきで11位の青学大は、総合連覇に黄信号。早大も、エース中谷(3年)くんで上昇の目論見はたせず8位どまり。暮れの日本選手権1万m出場が響いたか…。

〇4区(平塚-小田原20.9㎞)
 ここで創価大が魅せ場を演出。前回10区で区間新の快走を見せた嶋津(3年)くんが東海大を逆転、最後は足が攣〔つ〕るアクシデントに見舞われながらもトップでリレー。2位の駒大に1分42秒の大差をつけた。
 以下3位に早大が上がり、4位東国大、5位東洋大(堅実)、6位東海大(3区トップからの急ブレーキ)、7位順天堂大、8位帝京大までがトップの創価大から3分以内という混戦模様。青学大はルーキー佐藤くんが好走してシード権争いに希望をつなぐ10位に浮上。
 なお、区間賞は山梨学院大のポール・オニエゴ(3年)くん。19位という下位で順位を上げることない区間賞は、名門だけに寂しいかぎり。

〇5区(小田原-箱根芦ノ湖20.8㎞)
 絶対のスペシャリストはいない今大会。4区を余裕の1位通過した創価大、三上(3年)くんが区間2位と踏ん張って、みごと初の往路優勝はみごと。監督の「予想外」はマサカのホンネだったろう。優勝記録5時間28分08秒。
 以下、2位東洋大区間最高記録(昨年)をもつ宮下(3年)くんの追走で、復路に望みをつなぐ好位置をキープ。トップとの差2分14秒。
 3位の駒大も踏ん張った。トップとの差2分21秒
 4位の帝京大は細谷(3年)くんの区間賞で強豪校の域に近づいてきた。トップとの差3分31秒。5位東海大、6位東国大。
 強豪校では、早大の11位はまだしも、12位に沈んだ青学大は竹石(4年)くんの足が攣った場面でアウト、よく棄権にならずにすんだ。トップとの差7分35秒は連覇ギブアップ、いたしかたなし。

復路(3日)

〇6区(箱根芦ノ湖-小田原20.8㎞)
 往路を終えて、創価大の監督談「往路の流れをそのままに、先頭を走る喜びを楽しみながら走ってほしい」は正直な願望だったろう。
 「山下り」に大きな波瀾はなく、創価大がトップ通過。
 2位通過は、駒大。往路3位から、花崎(3年)くん区間賞の追走、1分08秒差。
 以下、3位東海大、4位東洋大青学大は12位から10位へ。

〇7区(小田原-平塚21.3㎞)
 創価大の原富(4年)くんの顔には余裕が見え、2位駒大との差を1分51秒に開く。3位東海大、4東洋大。5位には、佐伯(4年)くん区間賞の走りで東国大。
 青学大が近藤(2年)くん溌剌とした好走でシード圏入りの7位に浮上は、サスガ強豪校。

〇8区(平塚-戸塚21.4㎞)
 2位の駒大が、1位創価大に1分29秒差まで詰めてきた。
 3位の東洋大は、4位東海大を逆転。青学大は5位まで上がってきて復路優勝をうかがう勢い。区間賞は古豪、明大の大保(4年)くんが獲得。

〇9区(戸塚-鶴見23.1㎞)
 トップの創価大、石津(4年)くんが同校今大会初の区間賞のイイ!走り。2位駒大との差を3分19秒差に開いて、総合初優勝が見えてきた…か。3位は東洋大
 4位には青学大、飯田(3年)くんが区間2位の好走で、東海大(5位)を逆転。横浜ではチーム・キャプテンの神林(4年)くんが故障でみずから出場辞退、サポートの給水係になって顔を見せた。「新コロ」禍で注意力がそがれた今大会、ぼくは直前までこのことを知らなかった。

〇10区(鶴見-大手町23.0㎞)
 97回の「箱根駅伝」も大詰め。
 創価大のアンカー、小野寺(3年)くんが襷リレーをうけ走り出したとき、表情には緊張感がただよっていたものの、2位には3分差余りの余裕…に思えた。
 テレビ中継の放送からも、「第91回(2015年)箱根駅伝初出場から、わずか6年での初優勝なるか」の噂話しが聴こえはじめて…。
 朝の正月雑煮を祝う膳からずっと、チビリチビリ呑みつづけてきたボクも、昼をすぎて、そろそろ眠気がさしてきていた。
 (ことしは、このまま創価大の勝ちか…)

 ところが、追走する2位駒大の石川(3年)くんの走りも、安定感も力強さもあって侮れない。(これは…)と目を醒まされる想いあり、トイレに立って戻ってきたら、テレビ解説の瀬古さんから「逆転がありそう」の声が響く。
 創価大・小野寺くんの重そうになってきた走りに、初優勝を目指すアンカーへの重圧が透けてくる(アブねぇ…な)。

 こうなってしまうと、あとは坂を転げ落ちるよう。以下、ぼくのメモには…
 あと6kmで1分17秒差、あと4kmで47秒差、あと3kmで20秒差ときて、次には、2㎞手前でついに逆転!
 結局、逆転1位のゴールを駆け抜けたのは駒大、石川くんは区間賞の1時間09分12秒。駒大の総合優勝タイム10時間56分04秒。
 いっぽうの創価大、小野寺くんは総合2位でテープをきったものの、自身は個人記録区間最下位の1時間13分23秒。襷を受け継いだとき3分19秒あった差は、逆に22秒開いていた。
 (勝たせてあげたかった…のが正直な感想)
 また来年があるさ…は酷な言い草。だが、これが勝負、これがスポーツ。
 
 以下、3位東洋大区間賞こそなかったものの安定したリレーを見せてくれた。
 4位青学大は、復路優勝で強豪校らしさを発揮。
 5位東海大、6位早大、7位順天大、8位帝京大、9位国學大、十位東国大までがシード権を獲得した。

 やっぱり「箱根」は超オモシロイ!