どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

※ひた走る「にいやん」新谷仁美 /        2020クイーンズ駅伝ハイライト

-No.2628-
★2020年12月01日(火曜日)
★11.3.11フクシマから →3554日
★延期…オリンピック東京まで → 235日
★旧暦10月17日(月齢16.9)





◆「クイーンズ駅伝全日本実業団女子駅伝)」

 2020年、第40回の記念大会(11月22日・日=宮城)には、ぼくのとくに注目する選手が6人いた(ほかの選手に期待がないわけじゃないゴメンなさい)。

 JP日本郵政の5区鈴木亜由子、ワコールの3区一山麻緒と6区福士加代子天満屋の3区前田穂南、ダイハツの1区松田瑞生に、積水化学の3区新谷仁美
 鈴木・一山・前田の3人はいうまでもない、開催があやぶまれる東京オリンピック女子マラソンの代表。
 20回目の同駅伝出場になる福士(加代ちゃん)は、これがラスト・ラン。
 松田はオリンピック・マラソン代表を惜しくものがして…さて、いまどうしてる。
 新谷(愛称=にいやん)は、もちろん女子長距離界の至宝、ぼくの〝カムバック大賞〟アスリートである。

 1区7.6km。
 オリンピックの晴れ舞台をのがしたダイハツ/松田は、その口惜しさをグッと呑みこみ、ツギを見据えて振り払うように堅実に走った。

 …が、そんな想いも吹きとばすように、目の覚める若さの勢いで激走したのが、郵政/廣中璃梨佳。昨年、同駅伝の同じ1区で区間賞を獲った自信をバックに「世界の舞台で走りたい」夢をのせて、スタート間もなくスルスルと抜け出すと、そのまま独走して堂々の連続区間賞。連覇を目指す郵政チームにいい流れをもたらした。
 近い将来が楽しみな逸材。

 初優勝を目指す積水は佐藤早也伽がふんばって3位の好位置をキープ。
 ダイハツ/松田の好走も区間4位に霞み。
 ワコールは12位、天満屋は18位と出遅れた。

 つなぎの2区3.3kmでは、積水/卜部蘭が区間賞の走りで2位に浮上して、エース「にいやん」に襷がわたる。

 3区10.9km。いよいよエース競演の幕が開く。
 積水の(…というよりヤッパリ日本の)、女子長距離界を代表する「にいやん(新谷)」の、思ったとおりの独擅場になった。
 首位の日本郵政に10秒差で襷を受けると、これぞサラブレッドの惚れ惚れする走りで、早くも2kmで逆転トップへ。そのままスルスルと走り抜け、これまでの区間記録を1分10秒も大幅に更新する区間新の33分20秒。
 これがニイヤンだから、ふつうにしか見えない…が、区間新記録の更新幅がナント〝秒〟ではなしに〝分〟単位である。
 もっと凄かったのは、ニイヤンに抜かれ中継所では1分も遅れをとった郵政の鍋島莉奈も、その走りは相手がニイヤンでなければ脚光を浴びたはずの、区間新(34分25秒)は立派。せっかくの新記録も、さらにその上をいく記録の影に霞むことにはなった、けれども、自信にはなったネ!

 ほかのエース。
 ワコール/一山は、区間3位の記録で走って6人抜き、チームを4位へ。
 天満屋/前田も5人を抜いたが、区間8位の記録でチームは13位まで。
 ぼくは、今年新春の都道府県駅伝で優勝した京都府のアンカー、一山が走り出す前「後から追ってくる新谷さんがこわい」と真顔で語っていたのを思い出す。結果は大差を逆転にまではいたらず、だったが…。

 4区3.6kmは、外人選手出場枠。
 波乱含みのつなぎ区間だが、ここは積水/木村梨七(仙台育英高出)が区間14位ながら踏ん張って首位をキープ。負けじと郵政も宇都宮恵理が同タイムで喰らいつく。
 これも、つよいチームの好結果に結びつく大きな要因。

 しかし。これでキマリにもならないのが、駅伝のオモシロイところで。
 5区10km。もうひとつのエース区間に、ふたたび山場が訪れた。
 郵政/鈴木には、オリンピック代表をつかみとって後、いいところが見られなかったのだ、けれども。この日は、ひさしぶりにキレのある走りがもどって足どりも軽く、まさしく〝回転翼〟のごとくスピードにのる。
 積水/森智香子はベテラン、襷をうけたときの笑顔には〈ゆとり〉が見えたかと思ったが。そこに、じつは無理があったか、しれとも見えない落とし穴にはまったか…。
 走り終わってみれば、「にいやん」がつくった1分余の貯金をはたいて、逆に30秒ちかい借金ができていた、大誤算。
 裏を返せば、郵政の作戦勝ち、ともいえる。

 6区6.795km。
 駅伝ファンとしては、再々逆転のアンカー勝負を期待したけれど。
 郵政/大西ひかりが区間賞の走りで勝負あり、積水は2位キープがやっとのことだった。
 女子駅伝ラスト・ラン、ワコール「加代ちゃん」はいつもどおりのマイ・ペースで、さすがの区間2位を記録。ただ、やはりその走りには全盛時ほどのキレはなく。
 おまけに競技場のトラックへはチーム3位で入りながら、ゴール目前で豊田自動織機/薮下明音にかわされ。
「なんで抜くんだよぉ!」
 最後も加代ちゃんらしい、はじける笑顔で〆めくくってくれてヨカッタ。

 このレース全体に低調だった名門・天満屋では、アンカー小原怜が区間3位の走りでチーム(11位)を救いあげてくれて、これもヨカッタ。
  ……………

 こうして幕を閉じた、ことしの「クイーンズ・マラソン」。
 最高殊勲選手賞を授与するとすれば、やっぱり新谷仁美「にいやん」にキマリ、でよかろう。

 さきゆき不透明な、延期オリンピックの来年開催はなおビミョーだけれど。
 ひとりの傑出した女子アスリート、新谷仁美(32歳、婚活宣言)にとってツギはない(…だろう)。それを想うとフクザツ。
 
 …と同時に、そんな「にいやん」も5000mと1万mでは先輩「加代ちゃん」(38)
の記録に、まだ、とどいていない。
 それが、「にいやん」カムバックの背中を押したのかも知れない…ことを思うと、ますますフクザツ。
  ……………

 チャンスをつかみチーム・メンバーとして走ったあと、コースを振り返ってお辞儀をする選手の姿は、駅伝ファンにはすでにお馴染み。
 くわえて今シーズンの陸上シーンでは、インタビューに応えるアスリートたちの口から「この舞台を用意してくださった方々のご苦労に感謝」の言葉が、じぶんの(記録など)ことよりもまず先に、しっかり語られているのがウレシイ。
 
 これは、「箱根駅伝予選会」でも「全日本大学駅伝」でも、くりかえし見られてホンモノをつよく印象づけた。指導層の想いが選手たちに伝わった結果だろうが、この「スポーツできる幸せ」をもっと高らかに表現して、一段一層の意識改革をすすめてほしい、と願う。
「ファンあってのアスリート」は、「にいやん」の想いでもある。