どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

※国民に支持されてこそのオリンピック /     陸上・長距離、新谷仁美さんのコトバ

-No.2501-
★2020年07月27日(月曜日)
★11.3.11フクシマから → 3427日
★延期…オリンピック東京まで → 362日
★旧暦6月7日、弓張月
(月齢6.4、月出11:37、月没23:08)




◆「国民の皆さんが反対なら開催すべきじゃない」

 日本女子長距離の第1人者、新谷仁美さんならではのこの発言は、それにしてもこの人らしい、度胸とキレのよさが光って…ぼくをウルッとさせた。

 オリンピック2020TOKYO…1年延期があって…その1年前になった23日(雨の…海の日)に、陸上競技の東京選手権(会場は駒沢陸上競技場)女子1500m予選1組を1位通過したあとの、インタビューでの彼女は真顔だった。

 新谷さんは32歳。
 こんどのオリンピック、女子5000㍍と1万㍍の参加標準記録を突破している、つまり参加有資格者だが、まだキップを手にしたわけではない。
 その女〔ひと〕の、
「東京で、日本で開催するかぎりは、選手がやりたい気もちより、国民がやりたい、応援に行きたい思いでなければ成り立たない」
 発言は、無観客のスタンドを背に語られ、「走るニート」を自称するプロランナーとしてのメッセージは、「私たちは応援があってこそのアスリート」と結ばれた。

 「ここまでハッキリ言うトップ・アスリートは珍しい…(ざんねんながら、それが現状の)日本では」と、ずっと言われつづけてきたことを想うと、ぼくはウルみかけた目を上げて、ガハハと笑いとばしたくもあった。

 そうだ!
 これこそが、どうあれ、オリンピックに参加するアスリートたる者の、〈基本のキ〉の心得ではないのか。
 少なくとも、「応援してくださる方や関係者の方々に、感動と勇気を与えられるようなプレーをしたい」というようなレベルの発言は(かわいい…けれど、まだまだ未熟)、インターハイ・クラスまでのことにしておいてもらいたい、と思う。

 「にいやん」のデビューは颯爽、そして鮮烈だった。
 03年、興譲館高校(岡山)1年で、全国高校駅伝エース区間の1区を駆け抜け「怪物」と騒がれた彼女は、3年連続の1区・区間賞を区間新記録つきでもぎとると。
 同じ都大路が舞台の全国都道府県対抗女子駅伝でも05年、高校3年のときに、実業団のトップ・ランナーひしめく1区で区間賞の快挙。

 以来、日本女子長距離界をグイグイ引っ張ってきた。
 トラックの長距離や駅伝で活躍、オリンピックや世界陸上に代表の常連。しかし、いっぽうで、ハーフマラソン日本記録保持者(20年1月、1時間6分38秒)でありながら、マラソンでの優勝は第1回の東京マラソン(07年)のみ。相性だろうか…自己ベストも2時間30分58秒(このへんは、タイプは別ながら、先輩の福士加代子さんとも似かよう気がする)。
 14年に一度は引退を表明したあと、現役復帰という人生ドラマも経験。

 新谷さんの、上下動のないリズミカルなピッチ走法は、長距離ランナーの理想型、なにしろキレがあって美しい。
 そんな彼女に、ぼくが将来の指導者像を垣間見たのは、ハーフマラソン日本記録を樹立したアメリから帰国して直後、1月26日の大坂国際女子マラソン(オリンピック代表選考レースのひとつ)でペースメーカーをひきうけ、ほかのヒトにはマネのできない(少なくともボクはこれまでに見たことがない)役柄に徹してみせた〈これぞプロ〉の姿だった。

 どんなふうであったか…
 松田瑞生さんが、この時点では代表枠入りを果たした大きなレース。
 ここで新谷さんは、予定された設定タイムより早めのペースで引っ張った(松田さんを驚ろかせた)ばかりではなく、持ち前のフォームでイーブン・ペースをつらぬき、さらには、選手たちの邪魔にならない位置どりを心がける配慮おこたりなく。
 12kmで役割を終えレースを離れる際には、松田・福士ほかの上位ランナーに手振りで激励することも忘れなかった…

 そんな彼女の有名なエピソードに、「体が重くなるのがイヤだからマニキュアもつけない」というのがある。
 同じ理由から「腕時計もつけない」が、それでいて正確なペース配分ができるのは「いい体内時計をもっているから」に違いない。
 それが生んだ、あの、みごとなペース・メークだった。

 同じ「海の日」の夜8時(オリンピックの開会式開始、予定時刻)。
 無人の国立競技場では、水泳の池江璃花子さん(20歳)が、聖火のランタンを手に、世界のアスリートたちにメッセージを送った。
 白血病からの復帰を目指す彼女は、「スポーツが決してアスリートだけでできるものではないことを学んだ」ことを述べ、これからの1年が〝延期〟ではなく「プラス1」と考えたい、と語った。
 若い池江さんは、次のパリ大会を目標にすえる。

 翌くる24日(スポーツの日)。
 新谷さんは、東京選手権・女子1500メートル決勝で優勝。本番の1万㍍に向けて士気を高めた。
 「にいやん」に次のオリンピックがあるかは、わからない…
                         (※写真はスポーツ報知)