◎新型コロナウィルス「感染列島」に想う〈番外日記〉④3月5日(木)男子マラソンに大迫傑が来た!
-No.2357-
★2020年03月05日(水曜日)
★11.3.11フクシマから → 3283日
★ オリンピックTOKYOまで → 141日
★旧暦2月11日
(月齢10.5、月出12:33、月没02:31)
★〝桜〟開花まで積算600度追跡=4日まで429℃
※きょうは、二十四節気の「啓蟄」。冬眠から覚めた虫たちが這い出してくる頃。ですが…地表の人間世界はいま、それどころじゃない、とても、とってもの〝不安〟に怯えてます。
◆ついに〝本命〟男が…ひと皮むけて帰ってきた
新型ウイルス騒ぎに翻弄される春さきの首都。
3月1日(日)の東京マラソン。
天候は晴れ、気温11.5℃、湿度46.4%は、まず文句のない好コンディションに、きちんと結果もついてきた。
スタート地点の新宿、都庁前を映し出したテレビの画面を観て。
「ほんとかよ!」
ぼくは魂消てしまった…ナニにって、きまってるじゃないか、そこに〝観衆〟の姿があったからダ。
くふうされたカメラのアングルもよかったのだろうが。
大幅縮小(出場者は去年が市民ランナーもまじえた3万8千人、トップアスリートにかぎられた今年はわずか193人)で観戦自粛の呼びかけがあったなかでの、このニギワイぶりには、ただもう呆気にとられるしかなかった。
主催者側の一部には、「やっぱり、ちょっと寂しい」声もあったようだ、けれど、冷静に見れば、これだけの盛況でもビックリ、ある意味ではオソロシくさえあった。
どこへ行っても休館・中止のなか、行き場をうしなった人が集まった…というのが正直なところ、ではなかったろうか。
それにしても…あらためてヒトとは、これほどまでに物見高いモノであったか。
東京マラソンの〈祭りきぶん〉に惹かれ、心ならずも〈追っかけ〉をつづけてきたボクでさえ、こんどばかりは沿道観戦を自粛したというのに!
…………
ともあれ
まずは、レースを振り返っておこう。
このたびのレース、男子には、2種類のペースメーカーが用意された。
1つは、大会記録(2時間3分58秒)を更新してさらに〝世界基準〟の大会をアピール、2時間2分台の記録を視野に入れた高速ペース。
もう1つは、大迫傑(ナイキ)がもつ日本記録(2時間5分50秒)更新を目指す2時間4分台のペース。これは、いうまでもない、東京オリンピックのマラソン代表を決めるMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)指定のレースであり、しかも、先に〝勝負〟重視の2枠(男子は中村匠吾と服部勇馬)が決まって、のこるファイナルチャレンジの1枠は〝最速〟が要求されていたからだ。
この高速レースで注目されたのは、大迫を含む〈3強〉。
設楽悠太(ホンダ)くんにはレース前、彼らしい、いつものマイ・ウェイ発言があった。
「東京マラソンは賞金ねらいで走る。世界と勝負する資格があるのは4分台だと思うから、勝てても5分台の記録だったら代表を辞退することになるだろう」
その設楽くんは、スタートから〝高速〟組には一度も入れないまま、自身〈資格がない〉としていた第2グループに甘んじて走り、結果、7分台の16位におわり、無言で会場を後にした、という。
想うに、ぼくの見るところ彼は、レースに向けて調子を上げきれなかったか、あるいは練習不足。おまけにマイ・ペースの見せ場もなかったのだから、実際「なにも言うことはありません」だったろう。
設楽くんは、前から「これが国内で最後のマラソン、これからは海外の賞金レースで世界レベルを目指していく」と語っていた。
その意味では、これできれいさっぱり、わが道へ進んで行けるだろう。
いっぽう
もう1人の井上大仁(MHPS)くんと、大迫傑くんは、順当に〝高速〟トップグループで海外勢とわたりあった。井上くんの走りには、レース前に伝えられていた〝好調と自信〟が見てとれ、大迫くんは昨年秋MGCレース3位におえた〝悔しさと第一人者の自負〟で、逞しく緊った表情をしていた。
大迫くんは、13kmすぎと23km手前で2度、ペースアップした外国勢の揺さぶりに、とりのこされかけたが、脚も表情もシッカリしていて、ズルズルと大きく遅れることはなく、踏みとどまった。
これも昨秋MGCで、まわりのペースに惑わされ自身の走りを見失い、3位と敗れた結果をうけての成長といっていいだろう。
レース前から「アフリカ勢の高速についていって勝負したい」と語っていた井上くんは、その言葉どおり積極的にトップ集団にくらいつき、つねに大迫くんの前を走って、途中、大迫くんが遅れかけたときには(これで井上くんの勝ちか)とさえ思わせた…けれど。
勝負どころは30kmすぎだった。
ペースメーカーが外れ、先頭集団がペースを上げると、後方で力を貯め満を持していた大迫くんが追い上げて、ここまで先行してきた井上くんを一気に抜き去り、突き放して、勝負はついた。
レース後、瀬古利彦(日本陸連マラソン強化戦略プロジェクト)リーダーが、「30kmすぎまで井上が前にいたことが、大迫の最後の粘りにつながった」と語っていた、とおりかも知れない。
その井上くんは、このあと失速。力をだしきって26位でゴール後は、膝をついてしまった。
昨秋MGCレースのときの設楽くんと、結果は同じ。「これで日本選手にも希望がもてる」と期待する向きもあるようだ、けれど、現実はその差、歴然といっていい。
結果
大迫くんは、自身がもつ日本記録を21秒更新する2時間5分29秒で日本人トップのフィニッシュ。
選考対象レースはもうひとつ、8日の「びわ湖毎日マラソン」があるけれど、諸条件すべてにおいて東京を上まわる可能性は低く、大迫くんの代表入り、かぎりなく濃厚といえる。
しかし、その大迫くんにしても、総合では4位。30kmからの5kmごとのラップでは2番目の14分56秒だった…とはいえ、脚の痛みから大会記録更新には17秒およばなかったものの2連覇した勝者、レゲセ(エチオピア)の2時間4分15秒からは1分14秒遅い。
これがゲンジツ世界レベルとの差。
……………
ではあるけれども
日本陸連がウレシかったのは、このオリンピック選考MGC効果で、新たに、男子記録が一気に6分台2人、7分台7人とレベルの底上げが図れたことだろう。
そこには、もうひとつ、話題の厚底シューズ効果もあった。
こんどのレースでも、上位選手のほとんどが揃ってナイキの厚底シューズを履いて走ったそうで、いうまでもない他メーカーの追随もある。
2020TOKYOは真夏のオリンピックだから、もちろん勝負重視のレースになるだろう、が。勝負どころでのスパートのキレもよいことが、このレースでも実証されたから、きっとオモシロい展開が見られることになりそうだ。
東京マラソン2020、ほかのレース結果は
女子マラソンが、優勝サルピーター(イスラエル)2時間17分45秒(世界歴代6位の好記録)。
車いす男子優勝が、鈴木朋樹(トヨタ自動車)1時間21分52秒(大会新記録)。
女子車いす優勝が、喜納翼(タイヤランド沖縄)1時間40分0秒(大会新記録)。
いずれも、好天候に恵まれてのことだった。
なお
このレースで日本記録を更新した大迫くんは、日本実業団陸上競技連盟から、自身2度目になる1億円の報奨金を獲得。
彼には、これほど注目を集めるMGCレースでありながら、(ほかには)選手に賞金が出なかったことに対する疑問がある…とかで、来年3月を目途に、自らマラソン大会を創設する意向がある、とのこと。
こんどの1億円は、彼が考える「これから育っていく選手のため」に使う、どうやら、その一環として役立てるつもりらしい。
ぼくはずっと、大迫くんにアスリート〝求道者〟像を見てきた者だが、時代は変わってきている…ということだろう。
ただ、(それにしてもスポーツには、なんとカネがかかりすぎることか!?)の、想いがありつづけることは、ワカッテおいてほしい、と思うのだ。
それを、最終的にはクリアして見せないと、〈スポーツに真の未来はない〉と思っている。
…………
というところで、おしまいに。
冒頭に、あきれ顔で指摘しておいたことを、もういちど呟かせていただく。
「ヒトとは、これほどまでに物見高いモノであったか」
同じ日、都内であった大きな「ファッション・ショー」。
これも、このご時世、ウイルス感染のリスクを避けて〝無観客〟で行われたイベントであったのだ、が。なんと、その(実際に行われている臨場感を味わいたくて)会場に集まったファンが三々五々、会場周辺に屯〔たむろ〕して、スマホ配信される実況映像に酔っていた…という。
いま、ぼくは。
この国の、あまりに鈍感でひどい政治状況ばかりではない、それをとりまくこの国の、こうした無防備で危うい民心・民情にも、深く大きな〝不安〟を抱いている……