どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

◎新型コロナウィルス「感染列島」に想う〈番外日記〉④3月5日(木)男子マラソンに大迫傑が来た!

-No.2357-
★2020年03月05日(水曜日)
★11.3.11フクシマから → 3283日
★ オリンピックTOKYOまで →  141日
★旧暦2月11日
(月齢10.5、月出12:33、月没02:31)
★〝桜〟開花まで積算600度追跡=4日まで429℃

※きょうは、二十四節気の「啓蟄」。冬眠から覚めた虫たちが這い出してくる頃。ですが…地表の人間世界はいま、それどころじゃない、とても、とってもの〝不安〟に怯えてます。





◆ついに〝本命〟男が…ひと皮むけて帰ってきた

 新型ウイルス騒ぎに翻弄される春さきの首都。
 3月1日(日)の東京マラソン
 天候は晴れ、気温11.5℃、湿度46.4%は、まず文句のない好コンディションに、きちんと結果もついてきた。

 スタート地点の新宿、都庁前を映し出したテレビの画面を観て。
「ほんとかよ!」
 ぼくは魂消てしまった…ナニにって、きまってるじゃないか、そこに〝観衆〟の姿があったからダ。

 くふうされたカメラのアングルもよかったのだろうが。
 大幅縮小(出場者は去年が市民ランナーもまじえた3万8千人、トップアスリートにかぎられた今年はわずか193人)で観戦自粛の呼びかけがあったなかでの、このニギワイぶりには、ただもう呆気にとられるしかなかった。

 主催者側の一部には、「やっぱり、ちょっと寂しい」声もあったようだ、けれど、冷静に見れば、これだけの盛況でもビックリ、ある意味ではオソロシくさえあった。
 どこへ行っても休館・中止のなか、行き場をうしなった人が集まった…というのが正直なところ、ではなかったろうか。

 それにしても…あらためてヒトとは、これほどまでに物見高いモノであったか。
 東京マラソンの〈祭りきぶん〉に惹かれ、心ならずも〈追っかけ〉をつづけてきたボクでさえ、こんどばかりは沿道観戦を自粛したというのに!

  …………

 ともあれ
 まずは、レースを振り返っておこう。

 このたびのレース、男子には、2種類のペースメーカーが用意された。
 1つは、大会記録(2時間3分58秒)を更新してさらに〝世界基準〟の大会をアピール、2時間2分台の記録を視野に入れた高速ペース。

 もう1つは、大迫傑(ナイキ)がもつ日本記録(2時間5分50秒)更新を目指す2時間4分台のペース。これは、いうまでもない、東京オリンピックのマラソン代表を決めるMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)指定のレースであり、しかも、先に〝勝負〟重視の2枠(男子は中村匠吾と服部勇馬)が決まって、のこるファイナルチャレンジの1枠は〝最速〟が要求されていたからだ。

 この高速レースで注目されたのは、大迫を含む〈3強〉。

 設楽悠太(ホンダ)くんにはレース前、彼らしい、いつものマイ・ウェイ発言があった。
東京マラソンは賞金ねらいで走る。世界と勝負する資格があるのは4分台だと思うから、勝てても5分台の記録だったら代表を辞退することになるだろう」

 その設楽くんは、スタートから〝高速〟組には一度も入れないまま、自身〈資格がない〉としていた第2グループに甘んじて走り、結果、7分台の16位におわり、無言で会場を後にした、という。
 想うに、ぼくの見るところ彼は、レースに向けて調子を上げきれなかったか、あるいは練習不足。おまけにマイ・ペースの見せ場もなかったのだから、実際「なにも言うことはありません」だったろう。

 設楽くんは、前から「これが国内で最後のマラソン、これからは海外の賞金レースで世界レベルを目指していく」と語っていた。
 その意味では、これできれいさっぱり、わが道へ進んで行けるだろう。

 いっぽう
 もう1人の井上大仁(MHPS)くんと、大迫傑くんは、順当に〝高速〟トップグループで海外勢とわたりあった。井上くんの走りには、レース前に伝えられていた〝好調と自信〟が見てとれ、大迫くんは昨年秋MGCレース3位におえた〝悔しさと第一人者の自負〟で、逞しく緊った表情をしていた。

 大迫くんは、13kmすぎと23km手前で2度、ペースアップした外国勢の揺さぶりに、とりのこされかけたが、脚も表情もシッカリしていて、ズルズルと大きく遅れることはなく、踏みとどまった。
 これも昨秋MGCで、まわりのペースに惑わされ自身の走りを見失い、3位と敗れた結果をうけての成長といっていいだろう。

 レース前から「アフリカ勢の高速についていって勝負したい」と語っていた井上くんは、その言葉どおり積極的にトップ集団にくらいつき、つねに大迫くんの前を走って、途中、大迫くんが遅れかけたときには(これで井上くんの勝ちか)とさえ思わせた…けれど。

 勝負どころは30kmすぎだった。
 ペースメーカーが外れ、先頭集団がペースを上げると、後方で力を貯め満を持していた大迫くんが追い上げて、ここまで先行してきた井上くんを一気に抜き去り、突き放して、勝負はついた。

 レース後、瀬古利彦日本陸連ラソン強化戦略プロジェクト)リーダーが、「30kmすぎまで井上が前にいたことが、大迫の最後の粘りにつながった」と語っていた、とおりかも知れない。

 その井上くんは、このあと失速。力をだしきって26位でゴール後は、膝をついてしまった。
 昨秋MGCレースのときの設楽くんと、結果は同じ。「これで日本選手にも希望がもてる」と期待する向きもあるようだ、けれど、現実はその差、歴然といっていい。

 結果
 大迫くんは、自身がもつ日本記録を21秒更新する2時間5分29秒で日本人トップのフィニッシュ。
 選考対象レースはもうひとつ、8日の「びわ湖毎日マラソン」があるけれど、諸条件すべてにおいて東京を上まわる可能性は低く、大迫くんの代表入り、かぎりなく濃厚といえる。

 しかし、その大迫くんにしても、総合では4位。30kmからの5kmごとのラップでは2番目の14分56秒だった…とはいえ、脚の痛みから大会記録更新には17秒およばなかったものの2連覇した勝者、レゲセ(エチオピア)の2時間4分15秒からは1分14秒遅い。
 これがゲンジツ世界レベルとの差。

  ……………

 ではあるけれども
 日本陸連がウレシかったのは、このオリンピック選考MGC効果で、新たに、男子記録が一気に6分台2人、7分台7人とレベルの底上げが図れたことだろう。

 そこには、もうひとつ、話題の厚底シューズ効果もあった。
 こんどのレースでも、上位選手のほとんどが揃ってナイキの厚底シューズを履いて走ったそうで、いうまでもない他メーカーの追随もある。
 2020TOKYOは真夏のオリンピックだから、もちろん勝負重視のレースになるだろう、が。勝負どころでのスパートのキレもよいことが、このレースでも実証されたから、きっとオモシロい展開が見られることになりそうだ。

 東京マラソン2020、ほかのレース結果は
 女子マラソンが、優勝サルピーター(イスラエル)2時間17分45秒(世界歴代6位の好記録)。
 車いす男子優勝が、鈴木朋樹(トヨタ自動車)1時間21分52秒(大会新記録)。
 女子車いす優勝が、喜納翼(タイヤランド沖縄)1時間40分0秒(大会新記録)。
 いずれも、好天候に恵まれてのことだった。

 なお
 このレースで日本記録を更新した大迫くんは、日本実業団陸上競技連盟から、自身2度目になる1億円の報奨金を獲得。
 彼には、これほど注目を集めるMGCレースでありながら、(ほかには)選手に賞金が出なかったことに対する疑問がある…とかで、来年3月を目途に、自らマラソン大会を創設する意向がある、とのこと。
 こんどの1億円は、彼が考える「これから育っていく選手のため」に使う、どうやら、その一環として役立てるつもりらしい。

 ぼくはずっと、大迫くんにアスリート〝求道者〟像を見てきた者だが、時代は変わってきている…ということだろう。
 ただ、(それにしてもスポーツには、なんとカネがかかりすぎることか!?)の、想いがありつづけることは、ワカッテおいてほしい、と思うのだ。
 それを、最終的にはクリアして見せないと、〈スポーツに真の未来はない〉と思っている。

  …………

 というところで、おしまいに。
 冒頭に、あきれ顔で指摘しておいたことを、もういちど呟かせていただく。
「ヒトとは、これほどまでに物見高いモノであったか」

 同じ日、都内であった大きな「ファッション・ショー」。
 これも、このご時世、ウイルス感染のリスクを避けて〝無観客〟で行われたイベントであったのだ、が。なんと、その(実際に行われている臨場感を味わいたくて)会場に集まったファンが三々五々、会場周辺に屯〔たむろ〕して、スマホ配信される実況映像に酔っていた…という。

 いま、ぼくは。
 この国の、あまりに鈍感でひどい政治状況ばかりではない、それをとりまくこの国の、こうした無防備で危うい民心・民情にも、深く大きな〝不安〟を抱いている……