◎「誰かさん」…を想う心くばり
-No.2348-
★2020年02月25日(火曜日)
★11.3.11フクシマから → 3274日
★ オリンピックTOKYOまで → 150日
★旧暦2月2日、繊月
(月齢1.5、月出07:21、月没18:54)
★〝桜〟開花まで積算600度追跡=24日まで316℃
※パラリンピックTOKYOまで、半年。不参加国や、競技に参加できない選手が出ないことを祈ります!
◆どっちにしても「誰かさん」
「ほかの誰かさんに、迷惑かけるといけないと思って…。これから2週間くらいは、家から出ません。子どもにも孫にも会いません」
新型コロナウィルス、集団感染に見舞われたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客だった、ある老婦人がポツリと言いました。
その、ひと言にハッと目が覚める想いがして、それからホッと、いまの言葉でいえばホッコリさせられました。
この方は、「病院船」どころか「監獄船」のごとき扱いをうけた豪華客船から、一度だけあったウィルス検査の結果が「陰性」だった…それだけで、あとは確認の検査もなしに下船、電車・バスの公共交通機関を使って帰宅させられたわけです、が。
自分自身「ほんとうにダイジョウブなのかしら?」心配で、「肩身が狭いようでした」と述懐します。
そりゃ、そうですよね。
だって、一度は「陰性」だった人にも、再検査で「陽性」になる人がありましたし。しかも、感染はしても症状のあらわれない人がいて、その人からほかの人に感染してもいます。
いまはもう、いつ・どこで・だれから、ウィルスがウツされるかも知れない状況です。
ですからこの方は…
ほかの「誰かさん」に感染〔うつ〕させたくないし、ほかの「誰かさん」から感染〔うつ〕されたくもない、と思ったのです。
どこの「誰かさん」かは、わかりません…けれども…それだけヨケイに、です。
……………
この「誰かさん」を聞いて、ひさしぶりに「いい言葉」とめぐり逢えて、(日本語にもいい表現があるな)と思いました。
日本語には、「たそがれどき」とか「かわたれどき」とかいう表現があります。
「たそがれ」は、漢字で「黄昏」とも書かれるとおり「夕暮れ時」、「誰〔た〕そ彼(あの人は誰かしら…)」で。
「かわたれ」も同じようなシチュエーションで、(朝でも夕でも)「彼〔か〕は誰」です。
ただ、この場合の「誰?」には、「訝〔いぶか〕しむ」表情、つまり、今よりずっと闇が濃かった昔は、それだけで不安な「怪しむ」気配がただよいます。
ましてや「誰何〔すいか〕」となれば、「誰か?」と問いただして咎める雰囲気、とても尋常ではないわけで…。
この「こころもとない」不安感を、そっと和らげ、優しい気分にしてくれたのが…
「誰かさん」
でした。
「誰か」に「さん」がついた、それだけで、こんなに表情がチガってくるなんて、とてもとてもステキです。そう思いませんか。
……………
これも、いまはむかしの童謡に『ちいさい秋みつけた』(サトウハチロー作詞・中田喜直作曲)というのがありました。
〽誰かさんが 誰かさんが 誰かさんが みつけた
ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた
…で始まる唄は、じつは「誰かさん」はじぶんで、でも、ほかの「誰かさん」もきっと同じ小さい秋を見つけているにちがいない、思いの丈がしみじみとこもるものでした。
1962年にボニージャックスの歌でレコーディングされ、同年末の『日本レコード大賞』で童謡賞を受賞しています。
……………
この唄の3番の歌詞には、小さい秋の情景のひとつとして「ハゼの葉」がでてきます。
サトウハチローは自宅の庭のハゼの木の紅葉にハッとする想いで、この詞ができた、とか。
果実から木蝋(Japan wax)が採れるハゼは、樹種としては珍しいくらいの部類に属します、が。
櫨紅葉(はぜもみじ)と呼ばれるほど、目に鮮やかな紅葉を見せてくれます。
「誰かさん」のような、ものやわらかな表現が、もっと愛される世の中であってほしい…と想います。
あなたの日常用語にも、ぜひ加えてくださいな。