どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

※しつこ鋭く執念深い…珍魚「チンアナゴ」の眼光

-No.2552-
★2020年09月16日(水曜日)
★11.3.11フクシマから → 3478日
★延期…オリンピック東京まで → 311日
★旧暦7月27日(月齢26.0)




◆なんか妙にちんちくりんな…

 この魚は、実物よりも先に名を知った。
 魚体はなるほど「アナゴ」タイプだけれども…はて?
 「チン」(chin=あご)のココロがワカラない。「アゴなしアナゴ」じゃ洒落にもならない、じゃないか。
 こういうときは調べてみるもので、即、解決。
 この標準和名は、小型犬の「狆」に似ているからだ…そうな。
 しかし、ぜ~んぜんナットクしかねる。

 なぜなら、図鑑の写真を見たって。さらに、後には実物を水族館で確かめてからは、なおのこと妙ちくりん…でしかない。ぜひ「改名」してもらいたい。
 だって、だって、体長35センチほどの身体は、まぁ、かわいいと言えるかも知れない、が。灰白色の体に黒っぽい斑点模様は、なかなか侮〔あなど〕りがたい、いかにもクセ者ふう。
  ……………

 いまはじめに、ぼくは「妙にちんちくりんな」と表現した。
 「妙ちくりん」というコトバは、「ちんりくりん」から出たものだろう。ふつう「背が低い」とか「寸たらず・すん詰まり」の様子を、軽んじて言う。そういうことになってはいるが…じっさい場面での用法は、もっと幅が広い。「妙ちくりん」がそのへんの事情を語っている。
 「ちんりくりん」と同類の語に「つんつるてん」があって、どちらも語源は不明だ、けれども。語感のイエテる響き、幼児語ふうの表現はツミが軽く、コレはコレでまぁいいか…の気もする。
  ……………

 チンアナゴを観察して見る。
 穴に隠れる生活様式だから、穴掘りは巧みで、魚体の半分を占めるという尾を使って抉〔こじ〕るように、体をくねらせ、全身が安全に隠れるほどの穴を開けて、吾が棲み処とする。
 好みの環境をいえば、流れの速いサンゴ礁、外縁の砂底。なぜなら、そこには餌になるプランクトンがいっぱい流れてくるからだ。

 しがって、彼らが見せる珍なる生態風景。
 ひとつのグループのチンアナゴたちは、みな揃って流れに向かって上半身を伸ばし、丹念にひとつひとつ、獲物を目でキャッチしてから捕食する慎重派。

 つまり、ふだんは穴に潜めた半身を軸に食餌、敵があらわれるやいなや、すばやく全身を穴に引っ込めてやりすごす、そんな生き方。
 海の生態系では、弱小グループに属するから、小心らしくつねに警戒をおこたらない、でいながら。その眼差しの抜け目なさは、スキあらば反撃も辞さない、したたかさを秘めて、生存競争の厳しさを物語る。
 水族館の水槽を覗きこんでいた子のひとりが、この眼に気づいて「怖わっ!」と逃げ腰になるのを、ぼくは目撃したこともある。

 日本では高知から琉球列島にかけて棲むという熱帯系だが、性格はおおらか…とはいかない、狷介〔けんかい〕かつ老獪〔ろうかい〕な性質〔たち〕もあわせもつ…らし!

 ただし、繁殖期の生態(産卵の様子)はじつに微笑ましいもので、オスがメスのお腹にキスをして産卵をうながす。しかし、この場面をとらえたドキュメント映像のなかでも、チンアナゴの眼はオス・メスとも、とうぜん真剣そのものであり。
 その前哨戦、メスを獲得するオス同士の争いには厳しいものがあって、闘い烈しく、敗れてスゴスゴと退散するオスの、背は(トホホ…)に曲り、萎れていた。

 チンアナゴの英名は「spotted garden eel」、その意味するところは「斑点のあるツンツン庭草のごときウナギ」。
 やっぱり「ちんちくりん」を(好意的な見方ながら)軽んじてござる……