どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

※「用具」と「スポーツ(ヒト)」、宿命のライバル①

-No.2322-
★2020年01月30日(木曜日)
★11.3.11フクシマから → 3248日
★ オリンピックTOKYOまで →  176日
★旧暦1月6日
(月齢5.2、月出9:46、月没21:57)






◆競技の興味を殺〔そ〕ぐもの

 陸上競技に、フィールドの空高く選手が舞い上がる「棒高跳び」という競技がある。
 起源は、その昔、城の防壁とか水濠とかの障害を飛び越える実用の術、であったという。
 …が、そこが話しの本スジでは、もちろんない。

 その後、陸上競技に採り入れられた棒高跳びの発展には、用具の進歩による「記録の伸び」が不可欠であった。
 初期、撓〔しな〕りのない〈木のポール〉を使っていた時代の最高記録は、3m78(1906年)。
 次に、主流となった撓りがあって軽い〈竹のポール〉での最高記録は4m77(1942年)。36年かかってやっと1mそこそこ。
 ただ、良質な竹材に恵まれた日本では、この時代に棒高跳びに強くなっている。

 さらに、丈夫な〈金属ポール〉が開発されて、記録は4m83(1961年)まで伸びたが、わずか6cmの更新に20年近くも要している。
 つまり、金属ポールには重いデメリットがあったので、操作には相当な腕力が必要であった。

 そんなところへ、60年代から普及しはじめた新素材の〈グラスフィアバー・ポール〉の登場は、まさに福音。
 これが革命的な記録の伸びにつながり、世界じゅうを興奮させることになって、現在の世界最高記録は6m14(1994年、セルゲイ・ブブカウクライナ)である。
 ※なお、室内記録は6m16(2014年、ルノー・ラビレニ=フランス)

  ……………
 
 スポーツが愛好され、興味をいだかれる理由には、勝ち負けもあるが、記録もまた大きいのである。
 この愉しみを殺がれては、スポーツの発展などありえない。
 そんな、勝負や記録を支え果たす、用具の役目を無にはできない。

  ……………

 ここまでくれば、明らかだろう。
 「スポーツと用具」のことが、この話しの本スジである

◆ピンクの「ヴェイパーフライ」が刮目されたのは…

 日本国内では
 去年9月のマラソングラウンドチャンピオンシップ(MGC)で、男子ではなんと出場30選手のうち16人が「ピンク」の厚底シューズを履いて走り。
 結果、代表に内定した1位中村匠吾(富士通)、2位服部勇馬(トヨタ自動車)ともに、この「ピンク」のシューズ。女子、2位で内定の鈴木亜由子日本郵政グループ)も、またしかり。
 しかも、その派手な「ピンク」のシューズは、MGC当日に一般販売まで始めるという、衝撃的な宣伝効果で話題を攫った。

 この流れは、その後も加速するばかりで。
 10月の箱根駅伝予選会、明けて新年の箱根駅伝から全国高校駅伝都道府県対抗男子駅伝まで、テレビ中継の画面をショッキングに刺激しつづけた。
 これが、世に言われる「ナイキの厚底シューズ」効果。
 
 付け加えれば
 設楽悠太(Honda)が18年、16年ぶりにマラソン日本記録を更新して1億円の報奨金を獲得したのも、同じ年の秋、2時間5分50秒でさらに記録を書き換えた現日本記録保持者の大迫傑も、モデルチェンジ前の同社シューズの愛用者である。

 そればかりではない。
 世界に目を転じても、男子マラソン世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)が、非公式の特別レースながら〝夢の2時間切り〟1時間59分40秒で走ったのも。
 また女子マラソン世界記録保持者のブリジット・コスゲイ(ケニア)が驚異の2時間14分4秒をだしたのも。いずれも「ナイキの厚底シューズ」での結果であった。

 以上の事情については、ぼくも、このブログで折についてふれてきたし。
 「ナイキの厚底」に対抗する別メーカーや、そのシューズを採用する選手たちがあることも聞き知っており。
 
 したがって、その形勢に、こうも明らかな傾きが生じてくると、なんらかの動きが出てくるかも知れない。ぼくにも気がかりがなかったわけではない、けれども。

 やっぱり……
 なんと東京オリンピック開幕まで半年に迫った時点での、「国際陸連に厚底シューズ禁止のうごき」という、急な報道である。

 (どうも、この大会。開催都市東京の国の首相は、とうぜん、たいへん熱心な意気ごみだけれども。あれやこれや、つぎからつぎへと、ごたごたが絶えない。はっきりいって、主催者である国際オリンピック委員会=IOCの立ち位置、そのものに対する疑問符も、大きなるばかりなのだ、が…)

 ともあれ
 話しを、本スジに戻そう。
 

◆〝規制〟は〝逆行〟である…ハズ

 冒頭、棒高跳びの競技事情を繰り返すまでもない。
 スポーツにおける用具の存在は、ほとんどの場合が、余計なものの「介在」ではなく、「協働」するものである。

 もっとハッキリ、「選手」と「用具」はライバル関係にある。
 といってもいいことは、ほとんどすべての競技で証明されている。

 棒高跳びのポールの変遷しかり、競技シューズもしかり。
 選手たちにとって「便利」である、ばかりではない。その進化した「用具」を「使いこなす」には、選手それぞれの技術・力量も進化しなければならない。

 もちろん、進化した用具はまず高価だから、その時点で、使えない選手もでてくる。つまり、用具の進化にともなって伸ばす「技術進化」の入口で躓いてしまう選手だっている…のだが。

 いずれにしても、新しい「用具の可能性」は無限大といっていいはずで。
 したがって、どうあっても〝規制〟は〝逆行〟にすぎない。
 
 それは、パラ競技における補助(?)用具の進化と同じで。
 「用具の助けを借りるのは怪しからん」というような、妄言の類とかわらない。

 ただひとつ、よくよく考えなければならないのは「公平のルール」で。
 ナイキの厚底シューズは高価なうえに、発売早々に売り切れ状態というから、誰もが手にできる種類のものではない…が。
 また、登場したばかりの頃の、棒高跳びグラスファイバー・ポールにしてもそれは高価なものであって、「エリートの用具」と呼ばれたこともあったのだ…けれど。

 厳粛な事実として言えるのは、「ルール」が「競技の進化」に追い着いてイケていない、つまり遅れてしまっている。
 各競技団体のおエライさんたち、その多くは元選手たちだろうのに…なぜか、を聞きたい。
 
 それに
 では、いまあるこの現状の「格差」を、いったい、どうすれば「公平」にできるのだろうか?
 もっと根源的には、貧しい発展途上国がはじめから負わされているハンディは、どうするの?
 
 ひとつだけタシカなのは、これって、ぜ~んぜんどれもアスリート・ファーストなんかじゃない!

 以上のようなことを、いうまでもない当事者のアスリートもふくめて、すべてのスポーツを愛する人々は、真剣に考えなければならないときに、いま時代は直面しているのダ。

 さらに、もっと深刻なのは…

◆オリンピックに将来はあるのか!?

 …の大問題だろう。
 巨額な開催費用から、スポンサーに配慮が偏る運営を強いられ。
 経済発展の見返り期待して、これまでは招致に名のりをあげてきた世界の都市も、大きすぎる負担や国民の価値観・意識の変化から、辞退や立候補見送りが目立ってきている。

 いっぽう競技団体間に蔓延〔はびこ〕っているのは、あいかわらずの膨張主義で、メダル数増のための種目数増に躍起。
 対して、新たにオリンピック種目入りを目指す競技の数も、競技人口も増加の一途である。
 これらの懸案に、IOCはどう応え、対処していくのか?

  ……………

 おしまいに、ずっと前から抱いている、ぼくの率直な思いを言っておきたい。
 (近ごろの新種スポーツを見るにつけ、その思いは増すばかりなのだが…)

 「サーカス」と「オリンピック」の違いはナニか、ドコが違うのか。
 明確な線引きができないのであれば、「サーカス」の「オリンピック」種目化もまた、とうぜんすぎるほどアリなのではないのだろうか。
 
 過去に「サーカス」団体から、オリンピック委員会に申し入れとか、打診はなかったのだろうか。
 それとも、サーカス団体の方で自主的に遠慮してきたのだろうか。
 そんなことがアルとすれば、採用されなかった理由はナニ?

 「サーカス」も進化して、むかしの見世物とは別ものになってきているのに…
 あなたは、そう思いませんかしら…!?