※ちょっとヒトコト…フタコト…ミコト ~No.104~ 「ヘア・ドネーション」髪を切るボランティア
-No.2453-
★2020年06月09日(火曜日)
★11.3.11フクシマから → 3379日
★延期…オリンピック東京まで → 410日
★旧暦4月18日、寝待月・伏待月
(月齢17.4、月出22:16、月没07:22)
台風19号禍の被害が意想外なほどの広がりを見せた昨年暮れは、年の瀬が迫っても各地でつづく避難所暮らしのことにくわえて、支援のボランティアの手が足りないこと…が災害列島ニッポン世の中を〝鈍色〔にびいろ〕〟に曇らせました。
(そうして、いまはまた〝新コロ〟禍中の先の見えない不安がつづきます…が、おかげさまで、心ある市民の間には共感と共助の交流ケンザイです)
そこで、あらためて。
ボランティア……
阪神淡路大震災で芽吹き、東日本大震災でようやく根づいたかに見えた、ニッポンのボランティア精神も、しかしじつは、ザンネンながら内実まだまだ、ということのようです。
「だけどさ、ほんとのとこ…ボランティアって、なんなの?」
いまでも、こんなふうに訊ねられことが、あるくらい。
ほんとのところは、まだ、そんなニッポンのボランティア事情です。
……………
だからこそ、ここで。
ちょこっと、イイ話しを、ひとつ。
……………
大学の総合病院内を歩くと、腫瘍外科や放射線科、形成外科などの受付窓口ちかくに、「ウィッグ」のパンフを見かけることがあります。
なにかしらの治療の結果おこる頭髪の欠損を修復する「洋髪かつら」、用途は女性にかぎらず、子どもたちにもおよびます。
でも、ぼくもこの歳(74)になるまで、これには、ほとんど無関心でした。
男にも頭髪を喪う(禿頭という)キョウフはありますが、おかげさまでボクは〈白髪〉の方に進んだので、そんな(床屋に言わせると禿頭になる人の頭皮は硬いそうです)コトもなく。
毛の性質が剛〔こわ〕いもんですから、他人さまのお役に立つこともあるまい…と、そればっかり。
ところが
つい先ごろになって、「ヘア・ドネーション」というのに出逢いました。
つまり「髪の寄付」…臓器提供の「ドナー」と同じですね。
治療用に、みずから伸ばした髪の毛を提供します。
(これだって、じつは、その昔、貧しかった時代には、家計を助けるための娘の〝身売り〟とならんで〝黒髪を売る〟というコトがありました…それを想えば、まさしく隔世の感アリ)
ある日の新聞記事に、髪を長く胸のあたりまで伸ばした子の写真が、大きく載りました。
女の子かと思ったら、小学3年の男の子。
この子が
間違えられても髪を伸ばしているのは、
「病気の人の〈かつら〉をつくってもらうためです」
と。
「ヘア・ドネーション」は1990年代にアメリカで始まった運動。
日本では2016年から大阪市の「Japan Hair Donation&Charithy(ジャーダック)」が、18歳未満の患者を対象に取り組んでいるそうです。
この少年も、そんな活動をテレビの情報番組で知ってから伸ばし始めて、まだ半年。寄付できる長さになるまでには、さらに、あと1年くらいはかかるでしょうか。
「ヘア・ドネーション」啓発の集いなどにも参加して、世の中を知り、視野を広げていくうちに、みずからの活動を知ってもらい、もっと広めたいと思うようになって。
それには新聞社に投稿して訴えかけるのがよいと、この子は思いつきました。
こうして
この子は、「自分にもできる社会参加」に〈気づいた〉わけです…が。
その〝気づき〟から始まった、世の中とのあれこれの出逢い(接点)が、ほかでは得られない学び。
なにより貴重だったのは、そうしたなにげないカタチで、この子は自身を成長させることができました。
ボランティア精神などといっても、ボクの場合にしたって、けしてリクツから学んだわけじゃない。
ふとした〈気づき〉がきっかけでした。
〈気づき〉には、〈対面・対人〉がかかせません。
「交渉」というと難しいことのようですが、なに、他人と出逢いのチャンスをふやしていけば、自然に〈気づき〉のチャンスもふえていきます。
この〈気づき〉、身をもってわからせくれる指導者は少ないのがザンネン。
いまのところ、自分で〈気づき〉のアンテナ感度をよくしていくしかありません、けれども。
なにしろ
たとえば「髪」。
この「髪」ひとつで人の印象は左右されたり、偏見の因になったりすること。
また、学校によっては長髪じたいが禁止されることもある…などなど、さまざまな世情の縮図のひとつといってもいい。
前記「ジャーダック」によれば、男性からの「髪」の寄付は全体の10%程度、なかでも小学生となると、さらに、その中の数%にしかならない…とのこと。
そうでしょうね、それだけに、なおさら。
この子が、元は美容師の母に養育れた影響はあるかも知れませんが、なにしろステキな〈気づき〉ではありましたし。
それを、さらに〈広めたい意識〉になったことが、もっと大きい。
世のオトナたちが、現状のワクに囚われて身動きできないでいる、いま。
たとえば、スウェーデンの若き環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16歳)たちの活動が、新鮮、かつ勢いも力もつけてきています。
オトナたちが智慧もなく黙っていていいのか……問われているとき、デス。
★How to…「ヘア・ドネーション」★
ちなみに、「髪を切るだけのボランティア」を訴えて無償提供活動を行っている「Japan Hair Donation&Charithy(ジャーダック)」の場合。
原則として
〇長さは、乾燥した状態で31cm以上
※1人の子のウィッグ用には、20~30人分の髪が必要とされます。ひどくダメ
ージがなければよく、カラーやパーマや白髪であってもオーケー。
〇髪の根元を輪ゴムなどで縛る
※髪には個人差があるので、1人1人別に。
※紐で縛ると、ほどけてしまう心配がありからだそうです。
〇美容院でカットしてもらう場合は、事情を把握している「ヘア・ドネーション賛同
美容室」がよい。
とのことでした。
……………
【後日談】
★「20〔はたち〕ヘアドネ」★
こんな記事が載ったのは、成人式を控えた年明け早々の1月。
新成人を迎える群馬大学の、女子学生4人。
やはり、母親から聞いた「ヘア・ドネーション」の知識がきっかけで。
成人式の晴れ着姿に備えて、女子は髪の毛を伸ばす傾向にあることから、これはいいチャンスと気がついて企画したそうです。
前橋市長に手紙を書いて協力を依頼。メンバーは市内の美容院にも協力を要請して、29の店舗から賛同を得たとのこと。
前橋市の成人式にブースを設け、新成人たちを対象に、受付は12日から1年間。
賛同する美容院で免許証などの身分証を提示して髪を寄付すれば、カット料金の割り引やトリートメントなどのサービスが受けられます。
賛同美容院などは「20のヘアドネinまえばし」のホームページで確認。
目標は、「まずは1人分を作るため30人ほどの寄付を」と控えめですが、これなんかもちょっとイイ話し。
想うに…
いまの〈寛容ではない〉、自分が傷つかないように〈他者を攻撃する〉世の風潮は、まともじゃありません。
せめて、若者を指導する立場にあるオトナたちには、「イイものはイイ」と評価できる態度でありたい…と思います。