どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

土星探査衛星「カッシーニ」が消えた夜

-No.1466-
★2017年09月26日(火曜日)
★11.3.11フクシマから → 2392日
★ オリンピックTOKYOまで → 1032日

*お待たせしました、明日から、このたび18日間にわたる《11.3.11》被災地東北、18次<巡行>2017夏…の報告、始めます。*
*その前に……*







◆永訣のとき…

 このたびの「《11.3.11》被災地東北、18次<巡行>」18日間の長旅から帰って、9月13日。
 日常に復帰したことを最初に思い知らされたビッグ・ニュースが、「土星探査機カッシーニ最期のときを迎える」だった。

 1997年秋の打ち上げから20年(土星に到着から13年)。

 打ち上げのあった97年は、イギリスのダイアナ元皇太子妃がパリのセーヌトンネルで事故死したことで記憶される。
 事故の原因となった執拗な追っかけメディア「パパラッチ」は、「もののけ姫」とともに、この年を表象する流行語。
 同じ年内に他には、神戸市で「酒鬼薔薇事件」があり、また「ペルーの日本大使館公邸襲撃事件」では犯人14人が射殺されるという衝撃ごともあった。

 それからも、さまざまな思惑感情うずまく地球を遠く離れ、高さ6.8m・幅約4m・質量5.8tの探査機は、太陽系6番目の惑星「土星」を目指して、超高速の旅をつづけ。
 原子力電池3基のエネルギーに加えて、というよりも、天体間の万有引力<重力アシスト>を最大限に享受、金星 → 金星 → 地球 → 木星の順に「スイングバイ」して、2004年半ばに土星の軌道に到着した。
 壮大な宇宙空間の<空中ブランコ>ショーといってもいい。

 なにしろ土星は格別な惑星〔ほし〕
 それまでは衛星の月しか知らなかった少年の日のボクが、土星の存在を知ってからは、宇宙がそれこそ「どってんかいめい(土・天・海・冥)」にはじけひらけた。
 それは「明星」と呼ばれる金星なんかより、とびぬけて遥かな魅惑。
 <リング(環)>の裳裾が神秘な、愛情あふれて堅固な「こまの城」に想え。
 〝宇宙の奇跡〟そのものだった。

 けれども、現実のボクはヒトの世界にどっぷり。
 土星の「こま」は、そんなボクの脳裡でひとり、ひそかに金色に輝きながら、音もなくまわっていた……

 それが不意に、現実のことになったのは。
 2010年8月16日、京都「五山送り火」の宵、ぼくにとっては65回目の誕生日でもった。

 その1年半ほど前に、2度目の心臓、冠動脈へのステント挿入術をうけ、いちおうの安定をえた後。
 否応なしに(あとなんぼ…)か、わが命の目途を想って眺めやっていた送り火の遠い焔が…さらにその1年ほど前、信州長野、野辺山高原の星ふる夜空へと連想をとばせた。

 その夜、ぼくは高性能の天体望遠鏡でたぐりよせられた<土星の環>に、わが生を凝縮して見せられたような衝撃のなかにあった。
 〝天文単位〟に遠く遥かなその星は、微かに環をふるわせ躍っているかのごとくに見え、(感傷的になるのはまだはやい)とボクを勇気づけた。

 その半年後に《11.3.11》のこと、東北の沿岸部が東日本大震災による大津波に襲われ、ぼくはほとんど、わが生の欲するままに<巡礼>の旅に発つことになった。
 その被災地東北巡礼も、今年で7年目。

 その旅の仕舞いと、「土星探査機カッシーニ最期のとき」との合致に、イキ通じるものがあり。
 ぼくは、旅装をとくのももどかしくして、CATV652chディスカバリーチャンネルの『土星探査機カッシーニ、最後のミッション』を観た。

 土星に<到着>してから13年。
 カッシーニの挙げた成果には、搭載探査機ホイヘンスによる衛星「タイタン」への着陸(そこが地球のように雨があり、川や湖や海をもつ世界でもあることを発見)、衛星「エンケラドゥス」が氷のプルームを噴き上げることを発見、星屑の集まる土星の環(リング)が活発で動的なものであることを明らかにした……などなど。
 
 けれども、ぼくにとって、もっと心うごかされたのは、このカッシーニ〝プロジェクト〟に携わった人々に共通する、なんとも親しげな愛情たっぷりの接し方だった。
 20年という長い付き合いを想えば、なるほど、というよりもっともっと深いものが、メンバーの語る言葉の端々に感じられた。

 プロジェクト・リーダーが、カッシーニとの別れのときを語る。
 探査機カッシーニは、自身に付着しているかも知れない地球由来の微生物で、生命存在の可能性がある土星の衛星たちを汚染しないために、その最期は土星の大気圏に突入、燃え尽きて消滅させられることになっていたけれど…。
カッシーニは抵抗するでしょう、しかし土星のつよい引力には抗しきれず、やがて燃え尽きることになるでしょう」
 
 ぼくが、この番組を観たのが14日の夜。
 その明くる日、日本時間の2017年9月15日19時32分、土星探査機からの信号は途絶えた。
 科学的には「カッシーニの運用終了」だが……

「衛星タイタンに別れのキス」
「燃え尽きる直前まで土星のデータを送りつづける」
 メディアには擬人化されたカッシーニ惜別の辞が綴られ。
 そうして、カッシーニによって届けられた最後の写真の1枚には、超高速で回転する土星のリングが縞模様のグラデーションになって映っていた。
 この超高速で回転する星屑のなかを潜りぬけて行った永訣のときは、「最高の探査機による最高のミッション」と讃えられていい。
 
 ぼくのこの夜の夢には、宇宙時間にすればそれよりほんの少し前、地球からの、高精度天体望遠鏡による観察映像、「裳裾の環をふるわせて躍る」土星の生がいつまでも微かに金色に輝いていた。