どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

涙ぐましい「ホテイウオ」父親の愛情物語

-No.1462-
★2017年09月22日(金曜日)
★11.3.11フクシマから → 2388日
★ オリンピックTOKYOまで → 1036日

*18日間にわたる《11.3.11》被災地東北、18次<巡行>2017夏…の報告、帰宅後1週間の猶予をいただきましたが、未だに追いつかない写真整理をつづけながら…になりますけれども、とりあえず27日(水)から始めさせていただきます。お待たせしました*






◆姿形で考えさせる魚たち

 北海道に「ごっこ汁」「ごっこ煮」という郷土料理があって、恵山町(現在は函館市)にはごっこ汁を振る舞う「ごっこまつり」なんてのもある。
 この汁は、ジャガイモ・ダイコン・ネギなどの野菜と豆腐を加える煮ることが多い、味噌仕立て。卵をもったメスの方が美味で珍重される。
 アンコウに似たプルプル食感、ほとんど捨てるところのないすぐれた食材……

 「ごっこ」は東北・北海道の地方名で、標準和名は「ホテイウオ(布袋魚)」、俗に「ドテラウオ(褞袍魚)」とも呼ばれる。
 長さ20~30cmほどの体表は厚いゼラチン層に覆われているが、身は淡泊な白身。ふだんは深い海の底に潜むが、産卵期(12~4月)になると沿岸近く寄ってくるので冬に漁獲が多い。
 市場では、冬の季節感をもたらす魚として知名度があるが、一般にはまだまだ知られていない。

 ぼくは、この魚、姿形をたしかめるより先に食してしまった、「ごっこ汁」で。
 そうして、もうしわけないけれども、この魚の味をよく覚えていない、つまり〝味わった〟記憶がない。
 それほど淡泊であったのだろう、アンコウのような諄〔くど〕さもなかった。
 (ぼくは、世に言われるほどアンコウの味わいを評価していない)
 ただ〝泥くさい〟というのではない、くぐもった海の底の匂いを嗅いだ気がする。

 その後、ホテイウオ(ごっこ)の魚体とはじめて出逢ったときに「あぁ…」とナットクがいった。
 しかし、話に聞いたより遥かに想像を超えて、ぼくはなぜか<神>を想ってしまった。

 人が神を想い泛べるとき、その片やに美の<天使>があれば、もう片やには醜の<悪魔>がある。
 見ようによってはエイリアンを想わせる、ホテイウオはあきらかに醜の片や、同時に鋭い誘惑の片やにあった。
 「布袋」とか「褞袍」とかいわれると、なにやらフグに似てポテッと丸まっちく、愛らしそうに想像される、が。
 とんでもないブヨブヨの「ぶざま」、その「ぶ」も「無」か「不」か判じがたいというのが、ホテイウオの実態。

 同じ印象の、もっと激しいものには、やはり北の海に棲むオオカミウオがある。
 歯牙するどく怖ろしげな顔つき、くすんだ体色。口中に並ぶ強大な歯で貝類の殻を噛み砕き、甲殻類を喰いちぎる。
 それでいて、ふだんはいたって臆病ともいわれ、見かけ強面の男の心よわさを思わせる。
 この魚も、市場とは縁遠い地魚の扱いながら、淡泊な白身。フライやムニエルにして美味というが、ぼくはまだ味わったことがない。

 まだまだ他にもあるが、こういう醜の片やにある生きものと出逢うとき、ぼくは何故か強烈に神を想う、人が神を想う気もちを深く理解する。
 ただし、こんな見方もじつは「擬人化」という人の癖にすぎないわけで。
 オオカミウオやホテイウオに鏡を覗かせても(ナンノコッチャ)であろう、喰いつきもしなければ逃げ隠れもしないに違いない。

 そこで、ボクはほっとするわけだ。 
 スベスベというよりヌルヌルの感じは、たとえば富山湾で獲れるゲンゲという魚なんかもそうで、このゼラチン体質魚類には美味なものが多いが。

 さて、海のなかでの生存競争場面だと、どうだろう。
 魚の味覚のほどは知らないけれど、命をつなぐことがすべての食餌の世界では、ヌルヌルはやはりけっして好まれることはなく。
 薄気味わるいので、よほどのことがなければ襲われない、それだけ生存に有利な生態なのであろう気がする。

 ところで……

 ホテイウオはダンゴウオ科。小型の愛嬌者が多い同属のなかでは、この魚だけが大型になる。
 その生殖が、姿に似ず(擬人化でゴメン)涙ぐましい。

 オスはまず、海底の岩穴に産卵場所を確保して、ひたすらメスを待つ。
 ちなみにホテイウオの寿命は2~3年というからチャンスはわずか、だからこそ懸命。
 メスに(おそらく産卵場所の良さを)気に入られると(スマナイこれもまた擬人化だった)、いざ産卵。

 岩穴の天井に、一度におよそ2万個という卵を産み付けると、産後のメスはまもなく死を迎える。
 まことに儚い。

 あとをひきうけ、卵を守るのはオスの役目。
 岩穴に吸盤で貼り付き〝逆さま人生〟のオスは、卵を狙って侵入しようとするヒトデを口ではじきとばし、ヤドカリは咥えて放り出し、卵に新鮮な海水を送りつづけて気をくばる。
 そうして卵が孵化するとオスもまた死を迎える。
 まことに儚い。

 生まれた仔魚は、吸盤で岩に吸いついて懸命に育ち。
 夏になると沖合に出てエビやクラゲを喰って生きのび。
 そうして成長して海底へと向かう。
 (ガンバレ)と心ひそかに、思わずウルッとぼくは涙ぐむ……