どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

やっぱりホント!…にあった「オキアミ王国」/  南氷洋、ナンキョクオキアミの世界

-No.1419-
★2017年08月10日(木曜日)
★11.3.11フクシマから → 2345日
★ オリンピックTOKYOまで → 1079日



◆これが!?、プランクトン

 酷暑がひと息ついて、夏らしく気風のいい降雨もあったが、まだ処暑には間がある、きょうこの頃。

 せめてもの涼感もとめて、極地の話しをしたのが7月下旬。
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 「極地噺もういちど」気分にさせたのは、ひさしぶりに「あみ」の佃煮を食べたからである。
 江戸っ子という、ある意味マカフシギな人種〔ひとだね〕は、ヨッと一点豪華に入れあげるかたわら、カゲロウのように、あるいは「あみ」の佃煮のように、ごく儚い存在にフッと涙ぐんだりもする。

 姿かたちは一応エビの仲間でも、存在としてはプランクトン。
 「あみ」の佃煮には、よく見るとさまざまな水生生物の微小な初期幼生が含まれる。

 「あみ」よりも目だって大きく、3~4センチくらいはあるオキアミになると、塩茹でになって歯触りにも殻が意識されるようになる。三陸沖などで捕れる「ツノナシオキアミ」というやつ。
 生物学上は別だろうが、素干しの色あいがよろこばれる「桜エビ」なんかも、庶民にはまぁ似たようなもの仲間内と言ってよかろう。

 「オキアミ」も「ナンキョクオキアミ」になると、俄然〝資源〟として注目の目線が熱くなる。
 といっても体長6cm、体重最大で2g、寿命は6年、その程度のものなのだが…。
 (とてもプランクトンとは思えない)
 南極の生態系の「キーストーン種」、総量およそ5億トンという圧倒的な〝バイオマス〟は、「この惑星でもっとも成功している動物」と称賛もされる。

 ぼくらはそれを、ザトウクジラの「バブルネットフィーディング」、水泡の包囲網を仕掛け、大量のナンキョクオキアミをガバーッとひと呑みにする姿に、コクッと生唾。
 40トンもあるあの体重を養う栄養、ナンキョクオキアミが一手に引き受けている、というだけで一言もないワケだけれど。

 それをあらためて数値にしてみると……
  ●バイオマス = 1億2千500 ~ 7億2千500万トン → 地球上でもっとも成功した種の証し。
 これについては、アリの方がより大きなバイオマスとする見方もある。が、アリの場合には数百種類あわせての総数。対するナンキョクオキアミは単独種としての数だから、比較にならないし。
  ●全世界の水産資源(魚類、貝類、甲殻類、頭足類、他のプランクトン類)
                年間総生産量 = 約1億トン
  ●ナンキョクオキアミ単独の年間総生産量 = 約1億3千万 ~ 数億トン
 こんな見積りを提示されると、正直たじろぎさえ覚える。

 これに、さらに、生態系の維持に寄与する数値(ナンキョクオキアミの捕食量)を並べると。
  ●アザラシ類(カニクイアザラシなど)=6千300万   ~1億3千万トン 
  ●クジラ類(ヒゲクジラ)      =3千400万   ~4千300万トン
  ●鳥類(ペンギン、アホウドリなど) =1千500万   ~2千万トン
  ●イカ類(コウイカなど)      =3千万      ~1億トン
  ●魚類(コオリウオなど)      =1千万      ~2千万トン
  ●総計なんと、1億5千200万 ~3億1千300万トン    
 ただただ茫然。

 〝食物連鎖〟というとき、ぼくたちの頭には単純に、順次「小」から「大」への図式しかない、けれど。
 ナンキョクオキアミから次の段階へは、一気に巨大な哺乳類へと棒高跳び的な超飛躍を遂げてしまう。

 ナンキョクオキアミの分布が南氷洋に限られることを想うと、この南氷洋にのみ見られる現象の極めて宇宙的なことを思い知らされる。

 ……………

 その南氷洋(ぼくらの戦後すぐ世代にとっては、かつて国際捕鯨オリンピックの舞台)、〝周極フロント〟と呼ばれる縁辺部から南極大陸までの約3千200万㎢は北極海のおよそ65倍というから、ホッキョクグマの氷原もにわかに色褪せるようだが。
 冬はこの海域の4分の3が氷結、夏はまた2千400万㎢の海面となる、そのダイナミズムの中枢にナンキョクオキアミがいることを想えば、心ふるえる。

 これだけの勢力をもつナンキョクオキアミの世界には、きっと「オキアミ天国」が存在するに違いない。
 じつは、ぼく、ずっと秘かに思いつづけ、夢に見ていた。

 それが、ホントウにあるらしい、少なくとも「オキアミ王国」の存在を信じて追い求めつづけている研究者がいる、というのを知ったのは、つい最近にこと。

 その成果、深海潜水艇による調査結果の映像を観るチャンスにも恵まれた。
 巨大な群れをなすことで知られるナンキョクオキアミ、その密度は1㎥に1万~3万個体とという高密度だそうだが。
 潜水艇が深度を下げて行くにつれ、その体じゅうに発光器をもつという小さな個体群が、揺れ動く水玉模様となってずんずん密度を増していく。

 ゆったりエビ泳ぎの群れから、アトランダムに素早く捕食行動に飛びだすものが続出して、この海が植物プランクトンで充ち溢れていることが知れる。…ということは豊富すぎるほどの栄養塩に溢れ、しかもその消費量にはまだまだ余裕のあることを示唆してもいるのだろう。
 
 やがて中層と思われる深度に達するにしたがって、青く光る「光エビ」の群れは、まるで星雲のごとき耀きに充ちて、ほとんど目眩〔めくるめ〕いた。
 その動き、原子運動の世界をスローモーションで見るがごとき趣きもあった。

 ナンキョクオキアミは「巨大化のエサ箱」である、ともいわれる。
 クジラがその代表格だし、ほかの生物個体にも種々、その表れが見られるという。

 ひとつには、この巨大なエサ箱には、目だった捕食者という存在も、思ったより少ないことがある。
 たとえば、いま、南氷洋の海底には、これまでは棲息しなかったタラバガニが現れているそうで。
 これには、海底にまでおよんだ温暖化の影響も指摘されている。

 また、いっぽうではその温暖化が、ナンキョクオキアミのバイオマスを過去数十年の間に急減させている懸念もある、という。
 (その減少率が80%にも達すると推測する科学者さえある…とか)
 それを絵解きすると、こうなる。
 地球温暖化で氷山のような流氷が減少すると、流氷中に存在する洞窟状の穴場もまた少なくなり、これを捕食者からの逃げ場に利用していたナンキョクオキアミが被害を受ける、と。

 ナンキョクオキアミの「オキアミ天国」も崩壊の危機にあるやも知れず、とは。
 なんとも世知辛いうえにも世知辛い、美しき〝青い水の惑星〟ではないか……