どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

〝血の香り〟を食す赤身か、〝エネルギー脂肪〟のトロか…悩ましいクロマグロの味わい

-No.1390-
★2017年07月12日(水曜日)
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★ オリンピック東京まで → 1108日





◆急速冷凍&解凍技術の精華

 浅草の老舗「紀文寿司」4代目、関谷文吉さんが書いた『魚味礼讃』(中央公論社刊)という本。
 いまは文庫になっているようだが、ぼくが持っているのは1990年の初版本。

 魚の味わいの真実あれこれ、鮨屋さんらしい上ものネタ話し集といっていいものだが、そのなかに「赤ワインの余韻を保つ近海シビマグロに漂う血の香り」なるタイトルの一文があって……
 (あっ、率直な)と、魚市場の啖呵と江戸の生粋を、ぼくは感じた。

 この1980年代から90年代にかけての頃も、味覚のなかでもとりわけ魚味に関心の高まったときで、ほかにもさまざまな本が出版されたのだが、たいがいは、つとめて上品に語られることが多くて、マグロの赤身をズバリ「血の香り」と言いきれるような人は、なかなかいなかった。
 「マグロと赤ワイン」なんかも、談義する相手を選ばないと率直にすぎていけない話しだった。

 じつは、その頃からず~っと。
 ぼくは、食べくらべながら、考えつづけていることがある。
 マグロは「赤身」か「トロ」か…について。

 いうまでもなく、それは、〝血の香り〟の「赤身」か、あるいはエネルギー脂肪の「トロ」か、という命題だ。
 
 ただし、関谷さんのいう「シビ」マグロとは、クロマグロ(本マグロ)でも100kgクラスの極上ものをいう。
 (いまはウッカリすると、それさえ知らない寿司職人もいるくらいだけれど…)
 とても、ぼくら庶民の食卓にのるスジアイのものではないので。

 ゆずって、クロマグロの「赤身」と「大トロ」、いいところを見つくろって食べくらべている。
 それでも。

 食べものの話しに値段はヤボだが、けして安くはないし、大トロともなれば赤身にくらべて5割くらいは高嶺の花。
 生マグロはさらに〝段がちがう〟から、たいがいは冷凍マグロの解凍ものになる。

 それでも、いまは不満なく味わい談義ができる…のは、これまた〝だんち〟に発達を遂げた急速冷凍&解凍技術による。
 おかげで、ついひとむかし前までみたいに、せっかくの旨味が無慚に溶けだした「ドリップ・マグロ」に泣かなくてもすむようになった。
 ついでに、冷凍マグロを家庭で解凍する不安からも解放された。

 それでなくては、「赤身」か「トロ」かのお話しにもならない。
 上掲の写真は、柵を買って帰り、わが家で刺身にした本マグロ、赤身と大トロ。

 さて、そこで、あらためて「赤身」か「大トロ」か。
 関谷さんの言う「血の香り」は、「赤身」である。
 ぼくの舌も(これはいい)とヨロコブ。血の香りといってもステーキのそれとは異次元に清々しい。

 江戸っ子庶民が赤身(のヅケであったろう)に顔ほころばせたのも頷ける。
 しかし……大トロが江戸っ子にはウケなかった、というより、下の下とされた評価のほどが、どうしてもわからない。

 なぜなら、なんべん食べくらべても、ぼくには、大トロもやっぱりうまい、のであった。
 「大トロ」にはエネルギー脂肪の躍動がある、それが舌にとけるのだから、たまらない。
 この感性に、江戸の頃と今とで、決定的な違いがあるとは思えない。

 結論、いきつくところは、鮮度であった。
 江戸の頃に、いまどきの急速冷凍&解凍技術があったら、江戸っ子だって「トロ」に随喜の涙をこぼしたにチガイないのだ。

 門外漢のぼくには詳しいことはワカラナイけれども。
 「冷凍」で問題になるのは「最大氷結晶生成温度帯」である、という。
 それは「-1℃~5℃」、家庭の冷蔵庫ならほどよい冷えごろ。
 だが、「冷凍」問題の解決にあたっては、ここが最大の難関ポイント。
 この温度帯の通過にモトモタしてると、〈食品細胞内の水分膨張 → 氷結晶した細胞を内側から破壊 → ドリップ流出〉となる。
 そこで、この温度帯を超特急で通過させてやれば、〈食品の細胞破壊をふせいで → 品質の劣化もふせげる〉ことになる。

 以上の話しは、前にも聞いた覚えがあった。
 たしか「-50℃くらいまで」一気にもっていくのだ、と。
 
 ……………

 ところが、いまではもっと進歩して。
 「マグロの刺身には-60℃が最適」と知れている、という。

 「築地」から「豊洲」へ、中央卸売市場の移転がほぼキマった。
 その豊洲新市場にある冷凍設備には、この最新冷凍設備が導入されており。
 
 既にいまでも、月に300~400万円の電気代がかかっているらしい。
 これも素人にはよくわからいことながら、切ったり点けたりするより点けっぱなしのほうがいい、ということらしい。

 「市場機能を豊洲にもっていけば膨大な赤字を生むことになる」とされる、その一端を垣間見るような話しではある。
 また、築地もともに生かす、となれば、冷凍設備まで二重に必要か、の問題も生じることになるわけだ、が。

 とにもかくにも豊洲に移転となれば、市場関係者の通勤交通手段も確保しなければならない、その交通手段に冷凍品搬送の貨物機能を付与することが考えられるかも知れない。
 あるいは、もっと捌けた話し、市場の在り方そのものに、これまでは考えもおよばなかったような新方式が提議される、あるいはそんなことになるのかも知れない。

 ……………

 とりあえず、いまのボクは。
 『魚味礼讃』の関谷さんが、この、いまの急速冷凍&解凍技術にどんな想いでおられるか、興味を抱きつつ。
 もう、どっちがどっちの決着つけるのはヤメにして、もうイケマセンという日が来るまで、本マグロの「赤身」と「トロ」を食べくらべていきたい、と願う日々なのであった。