どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

サンゴ礁は大都会の下町/            カラフルな小魚たちに混じって獰猛な怪魚も棲む

-No.1316-
★2017年04月29日昭和の日、土曜日)
★《3.11》フクシマから → 2242日
★ オリンピック東京まで → 1182日






◆海の”大都会”は生態系のルツボ

 ”北帰行”タイプのぼくは、海も、少し薄情に思えるくらいの北の海のほうが慕わしい。
 ダイバーたちが好んで潜る南の海は、どうも、ちと眩しすぎるようなのだ。

 しかし、海には山も谷もあり、根と呼ばれる岩礁地帯もあれば、不毛の砂漠もある、ことに想いいたると……
 なぜか、ぼくの夢枕には『木枯し紋次郎』が立ち、吹きすさぶ空っ風の海底を、魚たちが命のよりどころにする「根」から「根」へと渡り泳いでいくのであった。

 そうするとフシギなもので、「根」も、より大きく複雑な環境のもとにある珊瑚礁の方へと、自然にアシが向き。
 (そう…つまりは寂しがり屋で、わけもなくハシャイでみたくなったりするのであった)
 そうするともっとフシギなことに、色とりどりに群れ集う小魚たちのアパート群が、折り重なるように迷路を広げるそこは、ニューヨークの下町『ウエスト・サイド・ストーリー』のミュージカルな世界へと、リズムもアップテンポに展開していくのであった。

 ところで、じつをいうと。
 珊瑚礁の海の、なかでも最大規模のグレートバリア・リーフに、ぼくも探勝ツアーに参加して潜らせてもらったことがあるのだが。
 あのマウスピースみたいに口に咥えるやつが、どうにもムズ痒くてたまらず、珊瑚礁の青い海の底で、あやうく隙間から海水を呑みこみそうになって肝をひやした覚えがある。
 やっぱりボクには、釣りも潜水も似合わないらしい。

 ……………

 現実にも、珊瑚礁の海は健康な”里山”というよりも、むしろ猥雑な”都会”的であるらしい。
 そこは、小魚たちが天敵どもの襲撃を避けて棲み暮らす下町アパート団地(このアパート群を建築したのは穿孔生物たち)であり、その近くには、大洋を旅する魚たちの宿場ともいうべきコーラルヘイ(小島)も点在、あわせて大小さまざまな生物の”繁華街”を幻出する。

 それは、まぁ、そのとおりなのだが。
 そこを根城に、”小魚天国”に君臨をもくろむ輩が、やっぱり人間世界と同様に存在する。

 たとえばそれは、大型魚で分厚い唇のアカマダラハタであり、ウミヘビよりはるかに獰猛なドクウツボである。
 しかし、小さな生物のために絶好の隠れ家を提供する珊瑚礁は、なるほど”穴場”ではあるが、狩場としてはかならずしも”いいシマ(縄ばり)”とは言えない。
 なによりも、大きな図体の身動きがとりにくい。
 そこで、ハタとウツボは一計を案じ、協力関係をむすぶことになる。

 食事の時間になると二匹は、珊瑚礁の入り口で待ち合わせる。
 まず、ハタが路地に踏みこむと、小魚たちは素早く逃げ惑い、ハタが入りこめないような穴場にとびこむのだ、が。
 その穴がたまたま、やや大きめであれば、ウツボが侵入できてしまう。
 また、そこでウツボが餌を捕り逃がしたとしても、外にはハタの大口が待ち構えている、という寸法だ。
 
 これでは、たまったものではなく。  
 南の、余所見には天国のごときサンゴ礁の海も、夜になれば、中小の魚たちにとっては”恐怖の海”となる。

 …………… 

 海の生態系としても大きな存在の珊瑚礁域は、独自の生物相を育み、ここだけに棲息する生物進化にもおおいに携わり。
 とくに、サメの仲間を個性的にした。

 珊瑚の浅瀬にはテンジクザメ(あのジンベエザメと同類に分類される)が棲み、干潮時に対応する大気呼吸法を身につけたばかりでなく、なんと泳ぐだけでなく腹鰭を巧みにつかう歩行術まで獲得している。

 レモンザメ(ときには人も襲う獰猛なメジロザメ科)と呼ばれる比較的おとなしいサメたちは、グループで小魚を浅瀬に追い込む狩りの”漁法”を獲得した…が、いっぽうでより大型のサメたちからは襲われる立場にもあるのだった。

 さらに、同じメジロザメ科のネムリブカになると、もう完璧に珊瑚礁の海に棲むことに特化。背鰭をおりたたむなど驚くべき技を駆使して狭い隙間にも入りこみ、優れた嗅覚・聴覚・電気感覚で獲物を探知して捕らえる、「凄腕ハンター」の異名をもつ。

 ……………

 珊瑚礁の海はまた、鳥たちにも絶妙の好環境を提供している。
 たとえばサギの仲間のハシブトゴイ。
 日本では絶滅が危ぶまれる南の鳥だけれど、グレートバリアリーフではこの鳥、ウミガメの産卵時期にあわせて子育てをする。いうまでもなくこれは、孵化したウミガメの子を餌にするためで、わざわざ海へ魚をとりにいく手間を省いている、といわれる。(ふむ……)。

 ちなみに、「ハシブトゴイ」は「嘴太五位」。「嘴が太い」のはワカルが、あとの「ごい」がはて?、もちろん「鯉」は関係ない。
 ここで、鳥に親しみをもつ方は「ゴイサギ」に思いあたる。まさに、その「五位鷺」の「五位」でアル。

 では、なぜ、よりによって階位の「五位」か。
 ときはその昔、平家が栄えた中世。醍醐天皇の宣旨(天皇の命)によって捕らえられ、「正五位」を与えられた故事にちなむ、という。
 動物の命名には、こんなに手のこんだものもある。
 (ちょと脱線)

[*なお、この記事投稿後すぐに、友人から訂正の知らせあり。「後醍醐」ではなく「醍醐」だろう、と。そのとおり誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。]
 ……………

 くりかえすが、珊瑚礁の環境というのは、人間世界でいえば雑踏の大都会。
 複雑より猥雑な、坩堝状態というか”闇鍋”の底のようなものであり。
 見通しもきかなければ、まともな考えもまとまりにくい、なにがあってもオカシくない。
 無事のように見えて、無事ではなく。
 有事にはまだ見えなくても、すでに有事の真只中にある。
 ちょうど、いまの世の中、そんな感じ…ってお噺し。