どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

本堂、宝蔵門、そして五重塔…浅草寺の屋根瓦チタンに輝く

-No.1295-
★2017年04月08日(土曜日)
★《3.11》フクシマから → 2221日
★ オリンピック東京まで → 1203日







◆3種とりあわせて”色むら”をつくる

 かねがねボクは。
 浅草寺、本堂屋根の瓦が美しいので、よほどいい本瓦をつかっているのだろう、さすが人気のお寺さんは裕福なものだと感心していた。
 その瓦が、じつはチタンという金属製(いうまでもないが決して安いわけではない)の瓦だと知らされたのは、ことし正月も半ばのこと。東京新聞、文化欄の記事だった。

 この本堂のチタン瓦は軽量で耐久性に優れ、あの《11.3.11》東日本大震災の揺れにもビクともせず(1枚も落ちることなく)、それでお寺さんの信頼を獲得したという。

 (ははぁ…)とボクは思った。
 かつて古都奈良の…何処であったか、とある寺院の低く造られた築地塀、瓦屋根が美しく陽を照り返しており、雨風と歳月に崩れかけた土塀の部分とはいちじるしい対比を見せていた。
 庭木の手入れに余念のなかった植木屋さんに遠慮がちに尋ねたら、
「金属瓦だそうです…なんでも…アルミダイカスト、とかいうらしい」
 こともなげな応えだった。

 それから、ボクの屋根感(観)が変わった。
 それも最近のことではない、想えばすでにかなりの歳月が経つ。
 いずれにしても、それまでのボクは、日本木造建築の”おおとり(真打)”ともいえる寺社建築、屋根は本瓦葺きと疑わなかったのだ、が。

 それからは、屋根を観る目が仔細になった。
 そうすると、よくできた金属瓦は、たとえば淡路いぶし瓦の銀灰色にもひけをとらなかった、けれども。
 難をいえば、窯変による”色むら”のないぶん、型にはまって”整いすぎている”印象なのであった。

 いわゆる金属瓦には、アルミダイカストのほかにも銅瓦あり、フッ素ステンレス瓦ありと多彩。また一般の住宅用にはリーズナブルなガルバリウム鋼板があり、わが家の屋根もいまはこれになっている。
 いずれにしても、瓦にくらべて軽くて丈夫で長もち、これが金属瓦のウリ。そのぶん正直、”貫録”にはかけていたのだけれど。
 
 その遜色(本瓦特有の”色むら”がない)を技術で克服、寺社建築にもつかえるものになった、という。メーカーは栃木県宇都宮市の「カナメ」だそうな。

 このたびの浅草寺詣では、だから、あらためて屋根瓦の見なおし。
 雷門をくぐって仲見世通りを行くと、宝蔵門。真下からはそっくり返って見上げる高さの仁王門で、「阿・吽」の仁王像と奉納大草鞋とで知られ、本堂・雷門とともに参詣客が群れ集まる人気スポット。
 (1964年再建の折に造られた仁王(金剛力士)像の、阿形は大相撲の北の湖、吽形は同じく明武谷がモデルといわれる)
 年中たいへんな人混みのなかにある門だけに、大地震でもあったときに瓦が落下しては一大事だから、というので。

 まず、この宝蔵門に初めてチタン瓦が採用されて、07年に完成。
 しかし、この門、高いうえに午後の陽を反射して、屋根瓦の仔細までは判じかね。

 本堂の大屋根を、少し離れた脇の方からとっくり眺めて(うむ…)と、ボクは唸った。
 チタン瓦の銀灰色、単調一律ではなしに、美妙な諧調リズミカルに、さざ波ながれ……
 これは3種の瓦のとりあわせによるという。
 冒頭でもふれた、本堂屋根チタン瓦葺の完成が2011(平成23)年1月のことだった。

 そこで、さて、「チタン」という金属。
 ぼくは化学にはよわいのだけれど、「原子番号22、元素記号Ti」習った覚えはある。
 純度の高いチタンは鋼に似た光沢のある銀灰色で、メリットは強度(鋼にまさる)・硬度・ねばり強さ・軽さ(粘土瓦の13分の1ほど)・耐蝕性(酸性雨や潮風に対して金や白金と同等の強さ)・耐熱性・耐金属疲労性を備え、汚れがつきにくい。
 これらの長所をいかして、航空機や潜水艦から、身近なところでは自転車のフレームやゴルフクラブ、ぼくが木工製作でお世話になるドリル刃などの工具、アクセサリーやテーブルウエアから種々医療器具にも。さらには、酸化チタンは白色顔料になり、光触媒の性質もある…と。
 なにしろ万能といっていいほどの汎用性を示すが、いっぽう。

 デメリットは精錬・加工がむずかしいうえに、費用もかさむ。
 チタン瓦を80年代から手掛けてきたカナメは、05年に0.3mm厚という薄さの瓦を完成させ。
 営業活動をはじめて最初の受注が、なんと浅草寺でラッキーだった、ことになる。

 本瓦の重厚な美しさは誰もが認めるところだけれど、その重さゆえ。
 大きな地震があったときの損傷、あるいは倒壊の被害は、それら寺社が避難施設にもなるところだけに、重要な意味をもつ。
 今後ますます、軽量・強靭の金属瓦の需要はまちがいなく増えていくだろう。

 浅草寺では、ただいま五重塔の修復が進行中。
 その屋根にも、チタン瓦が採用されており、完成は今年秋の予定。
 それはちょうどボクが、17度目の《11.3.11》東北被災地巡礼をおえた頃になるわけで。
 どこぞ近くの高みから、この塔のチタン瓦の重層ぶりをとっくり眺めてみたいものだと思っている。
 




*写真=(上段・上)は本堂のチタン瓦葺き、(上段・下)は宝蔵門のチタン瓦葺き。(下段)は浅草神社の本瓦吹き*