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どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

「ゆるくない」男鹿の風土に「なまはげ」がやさしい

文化・社会・観賞・読書・思想

-No.1218-
★2017年01月21日(土曜日)
★《3.11》フクシマから → 2144日
★ オリンピック東京まで → 1280日



◆「泣く子はいねがぁ~」

「親のいうこと聞がね子はいねが~」
 赤鬼・青鬼の面をかぶった男衆が、荒くれた声とともにズカズカ踏み込んでくると、いまどきの子どもでも〈ひきつけ〉たように怯えて泣きじゃくり、ひ弱さ曝けだして母の胸にしがみつく。
 男鹿の「なまはげ」ほど頭抜けた知名度の正月行事ないけれど。

 その「なまはげ」がいまは「やさしい存在」になっているというお話し。
 大晦日の「紅白」ではラシからぬ所業が乱心かと案じられたほどのNHKだったけれど。
 この報道番組はさすが「地方につよみ」をもつ本来の本領を発揮、名誉挽回のヨサがキラリひかった。

 深刻な”人口”の地盤沈下になやむ秋田県。全国でもっとも高い高齢化率で、65歳以上が3割を超える。
 そのなかでも高齢化と少子化のすすむ男鹿半島
 男鹿市…といわれると、だれもが「えっ」と思う、町村合併のおかげで市にはなったが。
 ほとんど荒々しく「ゆるくない」男鹿半島の自然まるごと。

 半島の南部、JR男鹿線の終着駅男鹿から遠くない船川港双六〔ふながわみなとすごろく〕という、お伽噺めいた地名の漁師町は、いまあるおよそ60世帯に14歳以下の子どもは1割以下。めだつのは高齢の夫婦やひとり暮らしの家ばかり。

 つまり、「なまはげ」でいかんなく存在感を発揮する童(わらべ、わっぱ)、はしゃぎまわるのが仕事の子らがきわめて少なく。
 「なまはげ」が懲らしめることになっている「わるい子」の姿を探すのもたいへんなくらい……

 おまけに肝腎の「なまはげ」鬼、ほんとは威勢のいい若い未婚の男の役どころ、にもかかわらず、そんな担い手の若衆にもことかくありさま。「なまはげ」鬼も歳を喰って高齢化……

 なんと「なまはげ保存会」会長さんなんか、もう50年にもわたって出刃包丁ふりかざし、「いねがぁ~」懸命に唸りつづけてきた。

◆そして本番、大晦日の出番

 高齢化の双六地区でも、さすがにこのときは帰省する子や孫があり、「なまはげ」も約束どおりに「いねがぁ~」と頑張るわけだけれど。
 個別訪問でまわる家には「いねがぁ~」の子のない家、ひとり暮らしの家もあれば、老夫婦で静まった家もある。

 そうなると「なまはげ」鬼も、型どおりではすまない、ちと考えなけらばならない。
 もともと「なまはげ」行事は、家々がそれぞれに、戒め懲らしめにまわってくれる鬼さんのため、酒肴や手料理でもてなす風があり。
 したがって挨拶もあれば、会話もある、さてどうする……

 「なまはげ」鬼が、やおら、かける声は「元気だか?」。
 なんと、ねぎらい鬼になっている。
 「風邪ひかねようにな」といわれてうなずく爺ちゃん、笑顔で「ごくろうさま」と見おくる婆ちゃん。

 年寄りにとって、なによりつらいのは話し相手のない、さみしさ。
 「なまはげ」鬼の訪れてくれるのが、だれよりうれしい。

 「いや~よく来たな」「まぁ吞め吞め」と趣向の膳に招きよせる爺っちゃ、婆っちゃは3日もかけてこしらえた手料理にニコニコ顔をそえてふるまう。
 これには鬼さん、ほだされて。
 「来年はぜひ孫を連れて来い、そうすれば105歳まで生きられるぞ」とうけあい。
 「元気でな」「また来るから」と、なごり惜しそな夫婦の家をあとにする……

 (いいなぁ、ちとせつないけど、いいよなぁ!)