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どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

十勝・上士幌町「ちょこっと暮らし体験」リポート-滞在2日目-/雪煙の向こうは道北…大雪山…

-No.1183-
★2016年12月17日(土曜日)
★《3.11》フクシマから → 2109日
★ オリンピック東京まで → 1315日







◆11月4日(金)、床暖房のこと

 昨夜半、目覚めて窓から外を覗いたら、凍える冷気のなか雪の結晶が微かに部屋の灯りに輝くのが見えた。
 なんだかウレシイような気分だった……

 明けて。
 きょうの天気、予報では曇りのち晴れ。
 これは、本日から13日まで期間限定の新聞購読、その紙面情報である。
 地元ツウはみなそうだという、朝刊が「道新」(北海道新聞)で夕刊は「勝毎」(十勝毎日=夕刊紙)。

 現実は晴れというよりも高曇りで、高い空を覆った薄い雲を透して、くまなく光がもれてくる感じだった。

 テレビもあるが、なぜかまるで見る気がおきない。
 高い山脈を目の前にしていると、せこせこせまい世間のことなんか、どうでもいい気さえする。

 気温は3度くらいまでいく(あがる)だろう、とのことだが、今朝はぜんぜん寒くない。

 床暖の温もりのせいであった。
 じつは昨日、あらためて挨拶がてら寄った「かみしほろ情報館」で、床暖が効かないと訴えたら。
「もっと、思いっきりバ~ンと、設定温度を上げてみて」
 先任コンシェルジュのお姉さんが、ぱっきりと仰る。
 (この方は、昨日は所用で留守だった)

 それで、ぼくにはピンときた。
 (これでもボク、旭川郊外で零下30度のなかを外出、マスクのせいで氷った睫毛を折って失くした経験をもつ)
 北海道の冬は、「暖ったかい」んじゃなくて「暑い」くらい。

  それは、なによりもまず、とにかくストーブが真っ赤になるくらいガンガン焚いて、室内の寒気を徹底的にはねのけてしまう。
 すべては、それから。
 だから、外は凍てつく猛吹雪であろうと、ストーブのまわりは熱帯の楽園、ランニングシャツ1枚で冷や酒グビグビ。
 景気をつけておいて、しばらくのち、また雪除け(雪投げ)に吹雪のなかへ敢然と出て行くのだ。

 帰宅後、そのとおりにして、みごとヤッタね。
 ただ、このモデルハウスはオール電化だ、厳寒期ともなればタイヘンな電気代になることだろう。
 ぼくたち、将来にわたって持続可能なエネルギーの在り方を考える者が、移住を考える際には、ひとつの大きな課題にちがいない。

 ちなみに、このたび上士幌町の「生活体験モニター」、滞在したモデルハウスの賃貸料(電気・上下水道代など含む)は。
 〇春期(4~5月)・秋期(10~11月)の、1泊2,000円也。
 〇夏季(6から9月)が、1泊3,000円也。
 〇冬期(12~3月)が、1泊1,500円也。
 というのが、冬期の暖房費など考えるとよくわからない、けれども、これはきっと旅行動態一般にいわれるハイシーズンかどうかによる区別なのであろう。
 あとは、管理費ほかの1泊1,000円(これは年間共通)が加算される。
 これだけ。

 ぼくらが借りたモデルハウス1号は、22.5坪(74.53㎡)の平屋(オール電化・床暖の一軒家)。寝具(ベッド)・食器など基本的な生活備品や器具類はそなわっている。
 部屋は、ダイニングルーム・リビングルーム・ベッドルームの3つながり(移動式の壁でそれぞれを仕切れる造り)で、これに玄関と洗面・トイレ・バスルーム、キッチン・ユーティリティーが付属する。
 つまり、不都合なく、ふつうに暮らせる。














◆11月4日(金)、閉鎖直前の三国峠

 のんびり、リビング外の雪化粧にひたる。
 「積雪」というには、ささやかすぎる「うっすら」だけれども、さりとて消えそうな気配もない。

 まぎれもない旅人だが。
 ぼくは、まだ「根雪」のはじまりを知らない。

 いうまでもない「根雪」とは、降っても消えてしまう「あだな雪」とはちがって、消えずに次々と降り積もって雪どけのときまでのこる雪である。
 とうぜんのことに始まりがあるわけで、この雪がそれになるのか、気にかかる。

 昼になる前に、役場観光課を訪ねる。
 他人〔ひと〕は「役場は役場」というけれど、ぼくは折あれば役場を覗く。

 不思議なもので役場には、それぞれの自治体がもつ肌あいというか、いつわらざる雰囲気の一端が、けっこう明瞭に嗅ぎとれるものがある。
 けっして、どこも似たようなものではない、はっきり言ってしまえば、用がすんだらもう二度と近寄りたくはない役場というのも、たしかに、まぎれもなく存在する。

 初対面の担当の方に、ずばり尋ねる。
「この時季、いちばんに薦めたいところは?」
三国峠ですね。峠の茶屋が明後日で今季の営業を終えて閉鎖になります、6日はお客さんが多いでしょうから…じつはぼくも家族を連れて行ってみようと思ってるんです…小さなお店はいっぱいで入れなくなるかも知れない。ですから、いまのうちに、です」
 こたえ、明快。

 じつは、ぼくも出発前の下調べで、6日の最終日に訪れてみよう気でいたのだったが。
「じゃ、行ってみましょう、これから」
 直ぐに、車を走らせることになった。

 ここ2年ほど、ぼくは雪道を走っていない。
 いちおう、万が一にそなえてゴム・チェーンを持ってはいたが、ウィンタースポーツに趣味があるわけでもなし、もうリスキーなアイスバーン・ドライブからは足を洗ってもいいころだと、考えてもいた。

 これまでには、「あわや」の危ない場面にも、幾度か遭遇してきている。
 地吹雪の東北道、八幡平あたりのトンネル入り口で前の車がスリップ、あやういところで追突を回避したことがある。多重衝突事故になっていたら命はなかったかも知れない。
 新雪が積もり重なったばかりの信州上高地安房峠にほど近い白骨温泉付近の坂道では、こちらが急な上りにさしかかったばかりのところへ、不用意に坂上から突っ込んできた対向車があって万事休す、対向車はブレーキを踏んだまま坂を滑り降りてきて、最後はおたがいに運転席から「どうしようもありませんな」顔を見あわせたまま、スローモ-ションで正面から衝突。さいわい、誰ひとり怪我ひとつなかったのが不思議な事故もあった。

 だからヒヤヒヤ内心ドキドキ、わずかな救いといえば、まだ酷寒の厳冬期ではないことだけだった。

 糠平湖の見えてくるあたりまでは、まぁごくふつうの枯れた冬景色、状況のいいところは路面が見えており、日陰の厳しいところでも圧雪の程度は軽かったが。
 ぬかびら源泉郷の集落をすぎると、とたんに舞台は厳冬へ、それにあわせるように空模様まで険しくなってきた。

 圧雪路が硬く堅く絞まって、薄いヴェールを被ったような雪の下は直ぐ雪氷状態と知れる。
 突風が樹々の枝の雪を巻きあげ、振り撒き散らして、視界が真っ白に閉ざされる。
 動くに動けなくなった車内で、対向車が来ないことを願うのみ……

 そんな過酷な道路状況下でも、道内ナンバーの車が雪煙あげて追い越して行く。
 この道の走り初体験のドライバーは、口の渇きに耐え、カーナビの距離表示に頼るのみ。
 これで季節が初夏の頃であったなら、吹きわたる風もここちよい山岳ルートであろう……と、いくら想像してみても慰めにはならない。

 辿り着いた三国峠は、完璧に氷雪のなか。
 ぽっかり口を開いたトンネルの向こうに大雪山、層雲峡があるとは、俄かには信じ難い。

 峠は、風が巻けばほとんど地吹雪。
 麓から上がってきた除雪車隊が、今季の初出場ではあるまいか、トンネルに吸いこまれ。
 しばらくすると、また戻ってきてゆるゆると糠平方面へと下って行った。

 峠の茶屋、「三国峠café」の窓から外の雪景色を眺めている先客の、どの顔にも今シーズン「おしまい」…と書いてある。
 席数かぞえて16ほど、これでは明後6日の最終日は満席御礼、まちがいない。

 おそいランチタイムにカレーライス、そのあと香ばしいコーヒーをいただく。

 caféのオーナー夫妻の、住まいはぬかびら源泉郷。
「ぜひ、また、どうぞ。こんどは吹雪じゃなく、風薫るころに来てくださいな」
 冬季閉鎖中は、糠平のスキー場の方で仕事があるそうな……