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どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

連発もでき、ジャンプと併用もできるテッポウウオ/昆虫を獲物に狙うのは、よっぽど味がイイのだろうか

-No.1019-
★2016年07月06日(水曜日)
★《3.11》フクシマから → 1945日
★ オリンピック東京まで → 1479日





◆ニッポンでは西表島にだけ棲息…

 西表島のマングロ-ブ林を舟行しながら、じつは、ぼく、ある(幻の)魚影を追っていました。
 幻の……といったのは、日本では唯一この西表島に棲息が確認(1980年)されているものの、同時に絶滅危惧種の扱いをうけることになっていたからです。
 その魚は、テッポウウオ
 (しかし、ネットで探すと釣り人の情報にこの魚を釣った人たちの釣果報告があるところを見ると、まだレッドリストには入っていないようでした)

 ぼくがテッポウウオを好きなのは、いうまでもなく水鉄砲を射って昆虫を餌食に捕らえる技師だから、いたって子どもっぽいけれども興味津々。
 最初に出逢ったドキュメンタリーの映像に、ほとんど釘づけになった記憶があります。

 そこで、ぼくがなによりワケアリに感じたのは、この魚の体形。
 ご覧のとおり、背鰭から口先にかけて目だって平たく、窮屈なほどに削げています。
 この体型には、かならずなにかしらヒミツがあるはずでしたが、とくに解説はありませんでした。

 水鉄砲を射つときの照準の役目かとも考えましたが。
 テッポウウオが獲物を射ち落とすのに、邪魔になる光の屈折をさけるのには、なるべく真下に近い位置から狙うほうがいいわけですから、ちょっとチガウみたいですしね。

 ずっとそれが気にかかっていましたが、ちょうど沖縄へ出かける前の頃になって、BS-NHKで放送がありました。
 ワイルドライフの『太平洋パラオ諸島 驚異の狩人テッポウウオが狙い撃つ』です。
 もちろん目を皿、釘づけで見つめました。

 満潮になるとマングロ-ブの森に入ってきたテッポウウオくん、木の幹や枝や葉などにとまった昆虫たち、バッタやクモやカマキリめがけて水鉄砲攻め。
 小さいものなら一発で、水面に射ち落として仕留め、大きくて木にしがみついたやつなんかは、たてつづけに数発連射して射ち落とします。
 連射は、5~6発くらいできるらしい。
 もちろん上手・下手の個体差はあるのでしょうが。
 スローモ-ション映像で見ると、水鉄砲の弾丸に相当する部分が、カメレオンの長い舌先みたいなダンゴ状になって、気のせいか水に粘り気さえ感じられるほど。
 いやぁ、じつにあっぱれ、たいしたものデス。

 しかし、背鰭から口先にかけての削げた、横から見ると水滴形を横倒しにしたような体型の、説明はありません。
 テッポウウオの口の中、上顎には、先に向けて細くなる溝があり、そこに舌をあてることでデキる(銃身にあたる)喉から口先にかけての水路が、水鉄砲の発射装置になり、鰓蓋をつよく閉じればいいようになっている。
 もしかすると、この重要な銃身づくりの(体構造上の)ポイントになっているかも知れません。

 15~30㎝くらいの魚ですが、水鉄砲の飛距離は1m以上。
 マングローブの根が複雑にからみあう水中から獲物を狙うには、むずかしい場面も多いのでしょう。ときには体力の消耗覚悟で跳びあがってじかに捕らえたり、あるいはまた、水鉄砲とジャンプの合わせ技もするそうな。
 かれらは、生まれて半年で水鉄砲射ちになるともいいます。

 熱帯域に生息するかれらですが、マングローブ林での狩りができるのは、日中の満潮時にかぎられますから。
 ほかの時間は、サンゴ礁の海に出て食餌もするのです。

 陸生の虫とかばかりでなく、水中の小魚や甲殻類なんかも食べることがあるわけなので、研究者たちは「それなのになぜ、わざわざ水鉄砲を射つ食餌行動なのか?」不思議がっているそうですが。
 ぼくは、雑草生態学の稲垣栄洋さんも『弱者の戦略』で指摘されているように、食べなければ生きていけない生物ゆえの、棲み分けの知恵だろうと思います。
 マングロ-ブが他の植物との競争に負けて、条件のよくない汽水域におりて根をおろしたように、テッポウウオは、他の魚が見向きもしない陸生の生物に狙いを定めたのでしょう。

 しかし……
 ドキュメンタリーの終盤、サンゴ礁の海に出たテッポウウオたちが、他の魚たちからは離れて、やはり水面近くを泳ぎながら落下生物ひろいに精出しているのを見ると、自信が揺らぎます。
 そんなに弱小というほどの、小魚でもないわけですから。
 すると、もしかして…虫の食味の佳さに目覚めてしまったのかも知れない…気もしてきて。
 すると、ひょっとして、背鰭から口先にかけて削げた体型も、水面近くを泳がざるをえない魚ゆえの、空からの攻撃者に対する備え、”隠れ蓑”戦術のためかも知れない気もしてきました。

 …………

 そういうわけで、西表島の仲間川クルーズで、テッポウウオに出逢うことはできませんでしたが。
 いまごろ、数匹でグループ行動をとることが多いらしいかれらが、どこでどんなことをしながら、明日にむきあっているのか、興味はつきません。