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どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

〈忘れ潮〉の沖縄紀行2016…西表島 ①/    高速艇が波頭蹴散らして〝噴っ跳〟んで行く

-No.1016-
★2016年07月03日日曜日
★《3.11》フクシマから → 1942日
★ オリンピック東京まで → 1482日




◆南の海の島々へ

 6月6日、月曜日。
 石垣島の朝は、どんよりと明けた。
 ホテルの窓からは、隣接する住宅のクンクリート平屋根(台風銀座にあるための吹き飛ばされないくふう)に雨水が薄くのこっていた。

 こんどの旅は、出発前の週間予報でも「全般的に梅雨空の、なかに陽ざしを見ることもあるか」といったような、選挙情勢みたいなものだったし。
 げんに初日のきのうは、空港のレンタカー社員から「あしたは天気がくずれそう」だともいわれていた。

 降られるのは覚悟のうえ…ながら、南の海と島を巡る、きょうぐらいは奇跡的に、ギラつくような晴れ間が望ましくもあった。
 部屋をでるとき、東の海と思しき方角に向かってニライカナイに手をあわせての…どたんば神だのみ。

 ”離島ツアー”迎えのバスに乗って港(石垣港離島ターミナルといって八重山観光の玄関口)に着いたら…。
 空の晴れ間が、じわりと雲をおしのけ広がりはじめる僥倖のしるし。

 ターミナルのツアー事務所で予約を確認、チケットを受けとる。
 ツアー業者はいくつかあり、それぞれにアレコレくふうを凝らした各種ツアーを企画、ホテルからターミナルまでのバス便は相乗りというシステムになっているらしい。
 観光がおおきな財源になっている離島の現実を反映して、キビキビとソツないの運営ぶりがうかがえる。

 本心を正直にいえば……
 ぼくは、団体旅行とか、〇〇ツアーとか、乗りあいとかが好きじゃない。
 じぶん(だけ)の思いをこめた計画で、可能ならば独自のチャーターで行きたいところだった、けれども……

 まもなくガイドの声がかかって、個人や小グループ客人は、別れ別れに指定された船へ。
 ここ(石垣島)より先は、最西端の与那国島への便をのぞけば、渡航のアシは船しかない。

 この船がスゴく速い。
 高速船…いや高速艇である。
 岸壁を離れ、港を出るとすぐにフル・スロットルのエンジン全開。

 辞書によれば、「船」は「人や物を乗せて水上を渡航するもの」とあり、「舟」については「手でこぐ小型のものに使うことが多い」と説明されている。実感とちがわない。
 「艇」については、「小舟、はしけ、ボート」とあって、「舟艇」の用語も紹介されている。
 だがしかし、こちらは実感と一致しない。
 ぼくのイメージする「艇」は、モーターボートであり、競艇であった。
 船舶構造上の詳しいことは知らないけれども、コマのような楔型の船底をずっしり沈めて行く「船」に対して、平底に近い船底の「艇」は水上を飛んで駆け行く印象がつよい。

 まさしく、その高速「艇」。
 すさまじいばかりの速力で、波頭の上を突っ切るというか、蹴散らす勢いで。
 日本語ではこういう場合「素っ飛ぶ」と表現することになっているのだが、とてもそんなもんじゃない、ほとんど「噴っ跳」んで行くといっていい。

 さまざまな離島ツアーの船便が、ほぼ同じ時間帯に相次いで出航して行く朝の石垣島沖。
 並走していた別の高速艇(竹富島行きであろうか)が、ぐんぐん遠ざかりはじめながら、小気味よく「噴っ跳」んで行くのだが、その船底と海面の間に空が覗けたりすると、これはほんとにコワイ。

 子どもの頃、「水切り」という遊びがあった。池や湖や川に平たい石をアンダースロー、水面を切って跳ぶ数を競ったものだが。
 ちょうど、そんな感じ。
 万々が一、衝突か、あるいは操船を誤るようなことでもあれば、大きな事故になりかねない。

 もっとも、これほどの高速艇でもなかったら、石垣島から西表島由布島、さらに最南端の波照間島までを巡る日帰りツアーなど、とても実現できないわけだし。
 これらの離島に飛行機が飛ぶことは、よほどのことがないかぎり考えられず。
 台風銀座の海域は、ふだんでも波荒いことで知られているから。
 住民にとっても、迅速な交通手段はありがたいわけで、諸事情やむなし。

 それでも、なお……
「きょうぐらいの波なら、ナイといったほうがいい」
 ぶ厚い胸板をたたいて船員が笑っても、なお……
 ぼくは、「噴っ跳」び航海の無事を祈らずにはいられなかった。