どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

城崎から香住へ、カニちゃんもとめて〝都落ち〟/ フルコース料理の〝これでもか〟ぶりにはマケました

-No.0912-
★2016年03月21日(月曜日、振替休日
★《3.11》フクシマから → 1838日
★ オリンピック東京まで → 1586日





◆姿を隠した松葉ガニ

 昨年の冬、シーズン入りした当初から、この冬は「カニがいないようだ」と不安の声が聞かれた。
 それは「少ない」より度のすぎたことを示しており、漁師たちにいわせれば「消えた」わけではないけれども、「隠れちまった」ようだった。

 その〈海の幸〉の心配なことは、-No.0821-2015年12月21日記事「越前ガニもサンマの漁も痩せて…どうなる沿岸漁業/暖冬はかならずしも土にも海にもよくはない」http://blog.hatena.ne.jp/sashimi-fish1/draft-scat.hatenablog.com/edit?entry=6653586347148200562
でお伝えしておいた。

 だからぼくは、ことしの新しいカレンダー3月20日の欄に、その気がかりをメモ書きしておいた。
ズワイガニ漁期、終わる」
 そのときまで、日本海の底のカニ籠は、さてどんな状況に置かれることになるのか……

 年を越して寒さがようやくホンモノになり、ぼくがうつらうつら、つい冬眠をむさぼっている間に3月の声を聞き。
 気が気でなくなったボクは、旅支度にとりかかり。
 すると、『城の崎にて』志賀直哉の短編が脳裡に思い泛び。
 そこはボクが初めて蟹喰い道楽(仲居さんが剥いてくれる身をむさぼるという)の極みを味わった温泉地でもあったから。
 もう矢も楯もたまらず城崎へ…となった。

 しかし。
 ゲンジツはキビシく、フトコロはサミシくて。
 ネットで調べる城崎温泉の宿、この時季のお代は、それは凄まじいほどのものがあって。
 くやしいけれど年金暮らしのボク、シツレイしました気分に萎れてしまった。
 (旅なれた身からすれば、それでもなんとか泊まれる宿を探しだす手はほかにあったのだけれども、いいトシをしてオタオタしたくはないし、城崎だけが蟹の本場でもなし、またもし温泉が目的なら蟹の季節は外すのがスジでもある)

 やむなく(それにしてもくやしい)”都落ち”気分を吹っ切り。
 カニ漁の港、香住に宿をもとめたのだった。

 3月8日、暮れ方。
 山陰本線の特急きのさき号は、城崎温泉駅どまり。
 香住駅までは、その先さらに普通列車で30分ばかり。
 同じ気分の方たちらしい乗客がほかにもけっこうあったのが、妙にオカシかった。

 「少ないことは少ない、ですけど大丈夫、コマルほどじゃないですから」
 迎えの車を運転しながら宿の人がいう。
 「漁師さん方は、クラゲが多いって、こぼしてますけど、それが松葉に影響があるのかどうか…」
 (ちなみにズワイガニのブランド名を、ここらでは松葉ガニと称する)
 
 宿の食事は、久しぶりの部屋食。
 カニを食べるなら(食べさせるなら)部屋食にかぎる、事情がある。
 カニの殻を剥き、身をほじくりだす段にかかると、ナゼか人はみな本性ムキだしになり、勢い無口にもなるものダから。
 優雅に会話を愉しみながら…というような洋食テーブルマナーとは、とても相容れないものが歴然とある、のダ。

 その夜のカニ・フルコース。
 氷で冷やした〈カニ刺し〉から始まり、いずれも本場もの証明のタグ付き。
 〈焼きガニ〉をバリバリやってる間に、〈カニみそ甲羅焼き〉は来るは、〈カニ・グラタン〉は来るは、〈カニの茶わん蒸し〉は来るは。
 ビールのコップ片手にしてたのが、やがて酒になり、ついにやがてはそれもグフッと喉からお断りがでる。

 それでもボクの目はしっかり、カニをかぞえている。
 一人前が、刺身で一杯(一匹)、焼きガニで一杯半……
 さすがに甲羅はつかないものの、量はたっぷり(これでもか)の感さえある。
 これが、おひとりさま10万円からする高級な宿ともなれば、プレミアムのダブル・タグ付き姿盛りになるのは、いうまでもない。
 途中から、案の定の無口モードに入ったかみさんは、ひたすら剥き役に徹し始め、そのぶんまで食べ役どころはボクにまわってくる。

 (もういい)と音を上げたくなっても、まだ鍋が〈カニすき〉が待ち構え(これまたカニが一人あて一杯よりも多く)てござる。
 それが目的だったのだからトウゼンというべきか、しかしコトここにいたっては、やはり身のほど知らずのゴウモンというべきか。
 さいごはほとんどムキになって、カニだけはなんとか腹から喉まで詰め込んだ感じ、野菜なんかは半分ほども皿にのこした。

 給仕の若い人に「あなたカニは好き?」と尋ねたら。
 (馬鹿なことを聞いたもんだ…)
 「好きですけど、いまはあまり食べたいともおもわない」との模範解答、正直タグ付き。
 ボクも若い頃に板場の経験があるから知っている、客が食べたあとの皿鉢の残り香ほど鼻につくものはない。

 腹をさすって(もうなんにもいらない、あとはもう寝たい)と思ってるところへ。
 「カニ雑炊にしましょうか」とダメをおされては、もはや両手でバッテンするのが精いっぱい。
 「わかりました、じゃ朝食のときに」で、ようやく幕とあいなった。

 ついでのことに、付け加えて申し上げれば…。
 翌朝の朝食も、ヤクソクの「カニ雑炊」が鍋で供されたほかにも、盛りだくさん。

 ボクは思った。
 この、ほとんど(これでもか)モードの宿の食事供与は、20年も30年も前から、なんら変わっていない。
 部屋・風呂などの設備で劣る民宿の場合はとくに、その傾向がより顕著なのだが。
 それはそれで、気もち、わからないではないのだけれども。

 もういい加減、そんな時代じゃないでしょうに、ねぇ。
 ほんと「もったいない」ですよ、人間の腹はゴミ箱とちがうし。
 ただでさえカロリー・オーバーの肥満症が、深刻な問題になっているニッポンなんだし。
 これはもちろん客もいけないわけで。
 ボクたちは、あらためてふか~く反省してます、はぃ。
 もういい、ゴウモンはゴメンだ!

 そうして、きのう3月20日、ことしの松葉ガニ漁期を終えた……