どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

「柚子湯」や「柚子釜」の柚子…アレは本柚子/  早熟で小ぶりの花柚子とは別種なんです

-No.0806-
★2015年12月06日日曜日
★《3.11》フクシマから → 1732日
★ オリンピック東京まで → 1692日





◆わが家の「本ユズ」が初めて実をつけた

 植えてから何年…になるだろう。
 俗に「柚子の大馬鹿18年」とかいうそうで、まさかそんなには経っていないが、10年以上の付きあいに間違いない。
 この成長の遅さは実生(種子から育つ)の場合で、だから接ぎ木した苗木がつかわれる。
 (接ぎ木の台木はカラタチ…と、たしか聞いたと思うのだが、ナゼかは知らない。ただ、おなじミカン科のカラタチにも鋭い棘があり、聞いた途端にナットクした覚えがあるのダ)
 園芸店で買った苗だから、もちろん接ぎ木だろう。

 そうして、ぼくが本ユズを植えた場所も、条件のいいところではなかった。
 陽あたりはいいが、栄養は不足気味の建物脇で、育つのが遅かった。
 どうして、そんなチョイスをしたかというと…。
「みかん(柑橘類)てやつはね、いじめるくらいでいいんです、甘やかしたりしたらロクなものに育ちません」
 三ケ日(静岡県)の、みかん農家の大ベテラン爺さまから聞かされていたからで、このフシギに説得力のある言がボクの頭にデンと腰を据えていたのだ。

 ともあれ…。
「柚子の木には、実ゆず、花ゆず、二種あるが、実柚子より花柚子のほうが味がいいように思えます。
 桃栗三年、柿八年、梨の馬鹿野郎十六年、柚子の大馬鹿三十年といわれるように実柚子はなかなか実がならない。そのてんも花柚子のほうが若木でも実を結ぶのでいいようです。
 柚子は不思議な柑橘類で、年末までは皮も中身も張り切っていますが、年を越すと中身の汁が日に日に減って、薄皮や綿(表皮の内側)がポッタリしてきます。橙、すだち、かぼす、などは表皮がしなびても中身はのつゆ(ジュース)はやせません。こんな状態になった柚子が最高に美味しいのをご存じですか?」
 これは、辰巳浜子さん『料理歳時記』の記述。
 (なお文中、辰巳さんがおっしゃっている「柚子の大馬鹿三十年」は、ご本人の記憶ちがいか編集ミスか…相場?よりさらに12年も増えている)

 ぼくは、この「こんな状態になった柚子の最高の美味しさ」を味わってみたいと思った。
 (樹皮の棘々は、とてもとてもジャマものだったけれど…)

 辰巳さんのこの記述中「実ゆず」とあるのが本ユズで、早熟なハナユ(花ゆず)よりも実が大きく、酸味も香りもつよく、種も多くて、寒さにも耐え、病気にもかかりにくい、”本格派”の貫録。
 
 植えるなら花柚子ではなく、やっぱり本柚子と決めたのは、有名な産地のひとつ嵯峨水尾(京都市右京区)、柚子山の香気に酔ったからだったし。
 「柚子湯」に浮かべるユズは、やっぱり本ユズ。
 「柚子釜」料理だって、本ユズでなければ…だったからである。

 ついでに付言すれば、ぼくは「植物の葉には一枚の無駄もない、すべてが太陽光の恩恵を享受できるように生えている」とする植物学説に、じつは例外があるのではないかと考えており。
 柚子という植物の葉のつけ方が、また(まったくいい加減)といいたいくらいに無茶苦茶に見える。
 叢りつく葉を落とすのに苦労させられるうえに、この葉には揚羽蝶が好んで卵を産み、毛虫をたくさん発生させる。
 (ただし、葉と陽の光の秘密を解明するには、まだいたっていない)

 けれど、けれど、ともあれ…。
 わが家の「本柚子」が、永らくお待たせの初実をつけた。

 夏蜜柑か、というほどに大きな実が、このところの寒気でようやく色づいてきた。
 樹がまだ小さいから、実の数は少ないけれど。
 年末の食卓の、ここぞという場面の、香りづけに登場してもらうつもり。

 そうして、辰巳さんが指摘するように「年を越して、ポッタリして、最高に美味しい」柚子を味わったら。
 「木守柿」のように「木守柚」をひとつ、枝にのこすつもりでいる。
 (産地の方はそうするそうな…)