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どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

『ネイチャー』の映像を彩った生きものたち/グンタイアリ、アンチエタヒラタカナヘビ、ミノカサゴなど

-No.0805-
★2015年12月05日(土曜日)
★《3.11》フクシマから → 1731日
★ オリンピック東京まで → 1693日




◆『ネイチャー』(2014年、イギリス)を観た

 BBC EARTH製作のこのドキュメンタリー作品は、いまも自然の営みを色濃くのこすアフリカ大陸に取材された。
 録画で、ぼくは2度目の鑑賞になる。
 くりかえし観るメリットは、初回の感動なり昂奮なりから、距離をおいて、細部までの洞察ができるようになること。
 もちろん、そんな再見に値する作品ばかりではないけれど…。
 ともあれ”映像の世紀”である、ぼくは”映像感覚の人”であった。

 この作品は、1謎めいた森、2燃え盛る地下世界、3異国の砂、4灼熱の平原、5魅惑の海中都市、6凍てつく山脈、7荒れ狂う激流のカテゴリーにわけて構成されており、そのそれぞれに見どころがあった。

 なかでも、ぼくの関心をひいたことの、いくつかを…。

◆”謎めいた森”のグンタイアリ

 昆虫綱ハチ目の、アリ(蟻)という生物には、興味がつきない。
 ぼくも小学生のときに透明な箱で〈アリの巣づくり〉の観察をしたことがあるし、庭の隅にできたアリの巣に攻撃をしかけて働きアリに噛まれたときの鋭い痛みをいまも忘れない。
  
 「アリの一穴」は、脅威でもあり警鐘でもあった。
 個体としては小さな生命体ながら、徹底された役割分担の集団行動には、不気味な畏怖を覚える。
 その畏怖感をあたえずにはおかない最右翼は、グンタイアリ(軍隊蟻)だろう。

 このアリたちは、集団生活をしてもきまった巣はもたない、”遊撃のコロニー”とでも呼ぶべきか。
 数十万から百万規模という巨大な集団で移動しつつ、行く手を遮るもの、邪魔するものは有無をいわせず、寄って集って攻撃し、喰らい尽くす。
 じぶんより大きいものでも容赦なく、身体に似あわず大きな牙(吻)で、昆虫や爬虫類・鳥類から大型の人間も含む動物、ときには自身の数千倍あるいは数万倍もある大敵をも屠ってしまう。
 (ジャングル食物連鎖の頂点にあるジャガーでさえ、逃げだすほどの獰猛さだといわれる)
 学者のなかには、食物連鎖の埒外にある彼らを「地上最強の生きもの」と讃える向きもあるほどだ。

 しかも、グンタイアリは目が退化していて、ほとんど盲目。
 ぼくは、そのことを想う。
 視力の効用がほとんど認められない地下や洞窟ならいざ知らず、目に見えたほうがはるかに有利であるはずの地上生活で、それでも目が退化するというのは、尋常ではない。

 それなりの理由があっての”進化”とすれば、それは〈大きなものに対する恐怖からの克服〉ではないか、と。
 じぶんより大きな存在に対しては、まず敬遠して危険のリスクを避けるのが、生物の本能である。
 このために、食餌がかぎられる宿命のなかに生きている。

 見えることが、怖れをいだかせる。
 グンタイアリは、その宿命を超越するために、敢えて視力を放棄しようと企んだのではないか…。

 グンタイアリにとっても、子孫の育成は最重要事。
 したがって、激しい狩りは幼虫の育成期に行われる。

 フェロモンに導かれて移動する盲目のアリは、辺り一面を埋め尽くすほど、20メートルにもおよぶ隊列をなし、時速1キロほどの速さで行軍しつつ食餌をもとめる。
 グンタイアリの階級は、雌アリ(女王アリ)・雄アリ・働きアリの3つで、働きアリの職種は4つにわかれる。

  1は、メジャー(働きアリの隊列を見守る)
  2は、サブメジャー(捕った獲物を運ぶ)
  3は、メディア(獲物に噛みつき、押さえこみ、噛み切るなど、狩りのスペシャリスト)
  4は、マイナー(集団で橋や梯子になってコロニーの移動を助ける、工兵隊のような存在)

 これほどの”盲目の強者”にも、苦手はあって。
 ハキリアリという、木の葉を噛みきって利用するアリには、敵わないといい。
 おなじ生息地域に棲むテキサスホソメクラヘビは、特殊な忌避物質を分泌してグンタイアリの攻撃を受けず、一方的に捕食するといい。
 サスライアリ(ぼくはこの名にしびれる)科の仲間は、アリ地獄から逃れられない、ともいわれる。

 さらに、ぼくを感動させるのはグンタイアリのもつ、すばらしい特性。
 女王アリの死んだ時が、群れ全体の終わるとき。
 なんという、潔さだろう。

◆”灼熱の平原”にアンチエタヒラタカナヘビ

 トカゲの仲間は、動物種のなかでも、けっこう我われの身近に在りながら、その生態は知られずにいる。
 ぼくが子どもの頃、トカゲだと思っていたのがじつはカナヘビで、しかし、トカゲとカナヘビの違いがいかなるのモノなのかを、ぼくは知らない。
 知らなくても日常生活に支障はないので、いまは放っておくことにしよう。

 砂漠に生きる、大きさは人の小指ほどという、アンチエタヒラタカナヘビの生態が可笑しくて記憶に焼きついてしまった。
 
 『ネイチャー』のナレ-ションでは「砂漠でダンス」と表現されていたけれど…。
 ぼくの感じでは「体操のお兄さん」。
 灼けつく砂漠の砂、その熱気から身を守るために、頻繁に、かわるがわる手足を砂から離すのだ。
 その動き、手が右のときは脚が左、というふうに、身体がこけないよう、理にかなった交互の動作に愛嬌がある。

 船員が訓練する旗振りのようにキビキビと、しかも、ときに頭の訓練みたいにイレギュラーな動きもまじって。
 それはまるで、いまふうの、ぼけ防止運動か老化防止運動のようでもある。
 
 ネット上でも、情報の少ないトカゲやカナヘビたちだけれど…。
 「かなへび」の語源が「可愛らしい蛇=愛蛇(かなへび)」というので、また一段と好きになってしまったボクだった。

◆”魅惑の海中都市”の華麗な悪玉ミノカサゴ

 カサゴという、煮つけにして、また干ものにしても美味い魚がいる。
 その親戚すじにあたるミノカサゴは、華麗な衣装をまとって優雅に泳いでいるようでありながら、攻撃的で短気な、なかなかの悪玉という。
 
 ぼくはまだ食べるチャンスに恵まれていないが、煮つけにするとオツな味といわれる。
 しかし、狙って釣れる魚でもなく数も揃わないから、市場には顔を見せない。

 水族館の人気者で、見ているぶんにはいいが、背鰭に激痛をおこす毒をもち、腹鰭の間にも剣がある。
 ダイバーに訊くと、水中撮影などでしつこく追いまわすと、怒って歯向かってくることがあるそうな。

 夜の海にハバをきかせ、海底の貝類や小動物をパクッとひと呑みに捕食すると聞いていたのだが。
 『ネイチャー』では、小魚を襲うこともあると紹介されていた。
 あのミノ(蓑)を広げて威嚇、小魚の群れを岩壁などに追いこんで捕食するという。
 そういえば、よく見ると怖い口をしている。

 いま、ひょいと、学生時代のキャンパスを、冬になると黒マント翻して闊歩する女友だちがいたのを想いだした。
 言動も男どこ吹く風といった威勢で、「魔女」と呼ばれ怖れられていましたっけ…。