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どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

マラソン不調だって”競歩”があるぜ…/      マイナー種目を注目競技に押し上げた男

-No.0546-
★2015年03月21日(土曜日、春分の日
★《3.11》フクシマから → 1472日
    (高倉健没から →  131日
★オリンピック東京まで → 1952日




◆美しいフォームでクネクネ速い

 スポーツ好き、陸上競技だい好きのぼくも、この競技にはまるで縁がなかった。
ざんねんながら観るチャンスもなかった。

 1964年の記録映画『東京オリンピック』で、市川崑監督の興味津々と迫るカメラアイがあって、はじめてスポットがあてられたといってもいいだろう。
 
 陸上競技のなかでも極めつきに、(記録とは別に)厳格にこまかい判定のもとに行われることも、このときに知った。
 けっして「くねくね」だけの変わった種目ではないのだった。

 ただ〈速く歩けばいい〉だけの競技でもない。
 ぼくらは、歩いていては間にあわなくなると走りだすわけだけれど、“競歩”の場合には、その〈歩く〉と〈走る〉との間の、動作をぎりぎりまでやかましくケジメる、うるさいルールがある。

 〈反則〉と見なされる動作は二つ。
 ひとつが、〈常にどちらかの足が地面に接していること〉。違反すると「ロス・オブ・コンタクト」という反則をとられる。
 ぼくなど素人目には、両足とも地面から離れた瞬間があるように見えてしますのダ。

 もうひとつが、〈前足は接地の瞬間から地面と垂直になるまで膝を伸ばすこと〉。違反して曲がると「ベント・ニー」という反則をとられる。
 理屈ではわかるが、意識したらとても歩けたもんじゃない気がするのダ。

 したがってとうぜんのことながら、このような難しいルール(定義といっていい)を、競技者がきちんと守っているかどうかの、判定にあたる審判がいる。

 審判員の数は6~9名。
それぞれが、参加選手のなかに〈違反が疑われる〉と判断した者があれば、「イエロー・パドル」を出して〈注意〉する。
 イエロー・パドルに「波型」が書いてあれば、ロス・オブ・コンタクト。「くの字」が書いてあれば、ベント・ニーだ。

 イエローがあれば、もちろんレッドもあって。
 “競歩”では〈明らかな違反〉の場合、レッド・カードが3枚になった選手は〈失格〉となる。
 ただし、イエローの〈注意〉だけなら、いくら受けても失格にはならない。
 かわりに、一度もイエローなしで、いきなりレッド(失格)もあり。

 (いいねぇ)と思う反面、(たいへんだなぁ)と溜息もでる。
 1人の審判が1人の選手について、注意できるのは1種類の反則について1回のみ、レッド・カードも1回だけ。
 選手に〈失格〉を告げる主任審判員は、提出された3枚のレッド・カードが、すべて国も個人も別の審判員のものであることを確認しなければならない。
 などなど…じつに細かい。

 細かいだけでなく、哲学的に深い趣もある。
 競技中の選手に体力の消耗が激しい場合でも、“競歩”はあくまでも競技自体が歩いている状態であり、しかも日常ふだんの歩き方をすると反則(ベント・ニー)になってしまうため、完歩さえできなくなってしまうことがある…という。
 つまり、マラソンならバテて〈歩きだす〉という自然な行為(もちろん失格になどならない)が、競歩にはゆるされないのダ。ひじょうにキビシイ。

 スピードも想像を超えて速い。
 “競歩”の世界記録をマラソンに換算すると、「サブスリー(3時間をきる)」と呼ばれる“セミプロ”レベルにあたる。
 ふつうの人では走っても追いつけない、見た目からうけるイメージとは大違いの、かなり過酷な競技。

 その、われわれにはまだまだ馴染みのうすい“競歩”競技。
 男子20kmで鈴木雄介(27)くんが、1時間16分36秒の世界新記録を樹立、陸上の世界選手権(8月・北京)代表に決まった。
 もちろん”競歩”での世界新は日本初だし、世界新そのものが、女子マラソンの高橋尚子(2001年・ベルリン)以来14年ぶり、男子となるとやはりマラソンの重松森雄(1965年・ボストン)以来50年ぶりという、おひさしぶりなのダ。

「自分でもびっくり、行けそうだから行っちゃいました」
 余裕のレース後コメントもよかった。
 世界的に知られた美しいフォームに磨きがかかり、これにスピードと体力強化が加わっての快挙。
 クネクネ歩きへの観衆の笑いが驚きにかわったことが、さぞかし愉快この上なかったろう。

 “2020TOKYO”の有望株が成長を魅せてくれて、ヨカッタ。

 ちなみに、北陸新幹線開通でにぎわう石川県というところは、くわしい経緯はしらないけれども“競歩”競技に熱心なところで、この選考レースも石川県能美市日本陸連公認コースで行われた。
 そこは鈴木選手の出身地でもある。
 選手強化、競技普及にとっても、いい例ができて、ウレシイ。

 オリンピックでの“競歩”競技は、男子20kmと50km、女子20kmで行われることになっている。
 が・ん・ば・れ、た・の・む・ぞ…おもしろくなってきた。