どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

健さん・降籏監督コンビの新旧作品/         ”戦後70”長崎巡礼の旅立ちを前に…

-No.0526-
★2015年03月01日日曜日
★《3.11》フクシマから → 1452日
    (高倉健没から →  111日
★オリンピック東京まで → 1972日

*伊豆の河津桜が八分咲きになったそうですね。”春の添い寝”なんて艶っぽくていいじゃないですか*



 健さん映画、対照的な2作品を観た。
 『冬の華』と『あなたへ』。

◆『冬の華』でヤクザから足を洗った

 『冬の華』(1978年)は、高倉健が独立(1974年)後に出演した東映京都作品。
 健さんには、古巣へのおつきあい、それと息のあう降籏監督への友情があったろう。
 このあと『動乱』(1980年)を経て、東映作品からは遠ざかっていく。

 『冬の華』は脚本:倉本聰、音楽:クロード・チアリ、筋立てにクラシック音楽と絵画がからむなど、垢抜けてはいてもヤクザ映画に違いなく、義理堅くて昔気質という健さんの役どころも、他の配役の顔ぶれを見ても、東映ヤクザ路線の上にあった。

 降籏さんにしても、ひとつヤクザ映画で芸術してみますか、というようなところではなかったか。
 『網走番外地』シリーズの後半から健さんとタッグを組み、この『冬の華』を最後に東映を退社した、降籏さんのメガホンはさすが堅実だったけれど、この人”向き”ではなかった。

 健さん”向き”でもなく、ぼく”向き”でもない。
 わずかに向いていたのは、健さんの役どころが、足を洗って木工職人になるつもりであった…くらいのところか。

 そういえば健さん、『網走番外地』シリーズでも刑務所では木工作業にいそしんでいた。健さんが木工を好んだかどうかは知らないが、似あっていたし、絵にもなっていた。
 まぁ、そんなところだから、この作品についてはこれくらいにしておきたい。
 ボクだって(ヤクザ映画はもういい)気分なんだ、健さん、なおさらのことだったろう…。
 

◆『あなたへ』で健さんも旅立っていった

 いっぽう『あなたへ』(2012年、東宝)は、いうまでもなく健さん映画の遺作、降籏康男監督とのコンビもこれが最後になった。
 また、独立後さまざまな作品でつきあいの深かった先輩俳優、大滝秀治(この作品のあと死去)さんの遺作にもなった。

 そうしてこの映画は、ぼくにとっても、もっとも健さんとふれあえるところの多かった作品なんデス、えぇ気に入ってましたね、いちばんに。

 まず、健さんの役どころが刑務所の指導教官なんですが、その実技が木工です、手のこんだ細工で神輿なんかこさえちゃう。

 つぎに、教官健さんの自家用車がエルグランド。
 これは、ぼくの《3.11》被災地東北巡礼につきあってくれた最初の車とおなじで、広々としたバゲッジ・ルームには木工仕事の道具立てや作業机、細工の仕掛けなんかが施されていました。
 (このエルグランドという車はいま、警察署の護送車としてよく見かけられる、そこがなんとも気づまりなところなんですが…つかえる車でしたね)

 『あなたへ』の筋書きは真っつぐ一筋、先に逝った妻が遺した絵手紙の伝言、「故郷の海に散骨して」に衝き動かされた男が旅立って行く。
 ロード・ムービーは、寡黙で孤高な健さんにぴったり、尊敬するジャン・ギャバンの後ろ姿を追う感覚もあったんじゃないでしょうか。
 故郷は男にとってヤッカイなもの…という真情は、不肖、半端者のぼくなんかにも、鼻の奥にツーンとくるものがあります。

 健さんの、さまざまな人たちとの出逢いでつづるツーリングは富山から、飛騨高山、京都、”天空の城”の竹田城、瀬戸内、下関、自身のふるさと北九州を経て、長崎平戸へ。
 妻役の田中裕子さんが劇中で唄う『星めぐりの唄』には、ぼくも胸のうちをそよがされました。

 平戸で、かたくなに散骨の船をだすことを拒んだ末に折れる老漁師、大滝秀治さんの「久しぶりに、きれいな海ば見た」という台詞。
 健さんは、あとでそのことにふれ、「ばかみたいにつまらない台詞だと思ってたんですが、大滝さんの口からでたらぜんぜん違った、そんなことってあるんですよね」と、述懐してましたね。

 人の言葉にはそういうところがある、いい話は人の語り口にあることを、ボクなんかもずいぶんいっぱい経験させてもらったんです。
 ところが、それをほかの人に伝えるとなると、これがとてもとってもむずかしい、書いても書いても書ききれないことばかり…。

 この映画のテーマは、人生の旅、男の旅。
 放浪にはおわりがないが、目的のある旅には帰るところがある、と。

 明日からでかける長崎巡礼の旅では、平戸も訪れます。
 『あなたへ』のクライマックス・シーンの舞台となった薄香の港へも、時間があれば寄ってみたいと思っています。

 ロケ地見学はボクの趣味じゃありませんけど、健さんの散骨(骨の粉を花と散ら)した海の深い色がハッとするほどよかったので、見ておきたくなりました。

 ぼくも、自身の旅立ちは散骨ときめているもんですから…。