どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

“帰還困難区域”浪江町の山野に見えない姿を追う/ 放射線像カメラマンのサンプリング同行記④

-No.0299-
★2014年07月17日(木曜日)
★《3.11》フクシマから → 1225日
★オリンピック東京まで → 2199日







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◆遂に“フクシマ”を吾が視野に捉えた

 2日目。午前中は、きのう下見しておいた塩浸の集落で生活雑器類をサンプリング、請戸川の(見た目には)清流に臨む草原に蝶が群れ飛んでいたので、これも数匹を採集。
 彼は、捕虫網の用意も怠りなかった。

 未体験の里山道のひと筋をゆっくり走って“タラの芽”畑を発見。芽吹いたタラの芽の、いくつかを検体にいただいたのを最後に、サンプリングを終え。
 午後は、沿岸部を目指して川沿いの国道114号を下った。
 さいわい睡眠がとれたおかげで頭痛は治まっていたが、気分は天候ほどには晴れず、暑さがこたえる。

「どこか、寄りたい場所とか、ご希望はありますか」
 昨夜、宿で彼に訊かれた。
 ぼくは遠慮なしに、海辺に出たい、福島第一原発を見ておきたい、ついでに港で魚が手に入るかも知れない、ことを申し出ていた。

「その前に、もう1ヶ所だけ、いいですか」
 山村から里村へと風景がかわると、それにつれて“帰還困難区域”から“居住制限区域”へと移りかわっていた。
 彼にはかねて心覚えの、相馬焼系、陶芸の工房を訪ねようと試みたが、検問もない通行禁止のバリケードに阻まれ、ついに突破口が見い出せなかった。
 道路封鎖に変更があったか、それとも、彼の頭の中のナビに狂いがあったか…。

 やがて風景は町中へとかわって、JR常磐線を跨ぐ高架橋。
 近くに浪江駅があるはずだった。
 不通になって3年以上が経ち、線路は生い茂る雑草のなかに埋もれていたが、町家には荒れたところが見られない。明らかに庭の手入れをし、草花を育てている家がある。
 きれいな自家用車が庭先に停まって、折からの休日、自宅の家守に訪れているらしい風景もあり。
 屋根にブルーシートを被せた家も何軒か見られるのは、除染のあとの補修工事中だろうか。

 ほぼ線路を境にする感じで、山側は“居住制限区域”海側は“避難指示解除準備区域”なのだ。
 風景が、住民の〈帰還の望み〉を訴えかけているようにも見える。
 めいっぱいの不安を胸に抱えながら……。

 検問を受けて、河口へ、請戸港へ。
 かつて“鮭漁”もあった川の両岸には、アノ日のまま時がとまった無慙の情景。
 4月に国道6号を、南相馬の方からこの辺りまで来た、あのときの感覚と瓜二つでありながら、〈検問〉のベールが剥がれたナマの傷痕は、まだ血脈とともに疼いていた。

 いちおう瓦礫を撤去したところで、その後はナニをするにも本腰の入らない、とりあえず様子見と知れる。
 他所者の目には、〈露骨〉とも思えるくらいの開き直り。
 そうさせるのは、いうまでもない、低い丘陵の連なる向うに、立ちはだかり蟠るモノ。

 林立するクレーン群、素っ気なく押し黙る建屋ども。
 福島第一原発まで、ここからはもう10キロもないのだ。

 爆発事故後の終息さえ目途が立たず、次から次へと打つ手のすべてに手抜かりばかり、このままではいつにせよ、コントロールされる日が来るのかどうかも疑わしい。
 そんな状態では、復興であれ再興であれ、意気の上がるわけもない。
 また、たとえ“帰還”が叶ったとしても、将来のある存続になるかどうかも、知れない。

 サッカーのワールドカップがドイツの優勝で幕を閉じ、新聞にいい見出しがあった。
   はじけるメルケル  いじけるブラジル
 
 いっぽう“フクシマ”では……
   居座るトウデン  追われるケンミン

「撮りましょうか、一枚」
 彼に誘われるまま、久しぶりにボクは、自身を被写体にした。
 魚一匹、手に入る筈もなかった港に背を向け。
 福島第一原発には、そっぽを向いて。
 すると、このたびのサンプリング地帯、“帰還困難区域”の山間部が真正面になった。






*写真=上段、(上左)は国道114号高架橋から眺めた常磐線浪江駅近くの線路、(上右)は同じ高架橋から浪江町の家並み・この辺りは“居住制限区域”と“避難指示解除準備区域”が混在している、(下左)は請戸港に近い請戸川に架かる請戸橋・橋だけは架け替えられたが…、(下右上)は請戸港から眺めた浪江町・あの日のままにただ荒涼…、(下右下)は請戸川の右岸・荒れ果て雑草丈高くはびこる中に打ち捨てられたままの漁船*
*写真=下段、(上)は請戸港から間近に眺める福島第一原発、(中左)はクレーンの動きまで分かるこの辺りは10キロ圏内、(中右)は河畔の道を茫然と歩くボク、(下)は請戸港を背に原発にそっぽを向いて立つボク*