どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

下北半島(まさかり)の柄の先…尻屋崎の“寒立馬”/風に磨かれた肌とたてがみ、やさしい瞳

-No.0294-
★2014年07月12日(土曜日)
★《3.11》フクシマから → 1220日
★オリンピック東京まで → 2204日




 「風の岬」という。
 海に突きだした大地の突端には、たいがい強い風が吹く、さえぎるものなく渺々と吹きわたる。

 下北半島青森県)北東端の尻屋崎も、名うての風の岬だ。
 その、短い草がしがみつくように生えるだけの荒れ果てた土に、道産子みたいなガシッとした脚を踏ん張って、野生の馬たちが、たてがみをなびかせ風に耐えていた。

 夏も盛り、8月の晴れた日であった。
 帽子を手で抑えていないと飛ばされてしまうほどの、烈しい風。
 その風に舞ってつよく臭うのは、乾いた大量の馬糞である。

 いやでも鼻がむずむずしてくる、片手で帽子を押さえ、もう一方の手で鼻と口を押さえると、カメラを構えることもできず、シャッターに集中すると、盛大なクシャミに見舞われ、帽子がはじけ飛びそうになるのだった。

 しかし、ここ本州最北端の岬に、灯台と津軽海峡の碧い海原をバックに立つ野生馬の群は、あまりにも絵になりすぎていた。
 なぜか、現実感が薄かった。
 馬たちは、つよい風を少しでも和らげる立ち位置、角度を心得ている。
 その情景は、用意されたようにさえ見えた。

 やはり、だれか世話をやく人がいて、訪れる人たちに見てもらうため、わざわざ風の岬まで連れてくるのではないだろうか…と。
 思いたくなったにには、ワケがある。
 ボクは、その年(09年)の冬に、心筋狭窄症のステント手術を受けたばかりであった、しかも2度目の。これでなんとか治まったから、まぁ、いいようなものの。心身なんとも頼りなく、命おぼつかないありさまだった。
 そんな不安をかかえた心理に、「野生」がいまひとつ、ピンとこなかったにちがいない。

 ……で、つい、バカなことを訊ねてしまったのだけれども。
「いいえぇ、じぶんたちで好きなところに行くんですょ」
 岬の食堂兼売店の方がこともなげに言う。
「この風がきっと、気もちいいんじゃないですか、虫よけにもなるんでしょうしねぇ」
 風が、わらったようだった。

 ひとつの思い出がある。
 あれは、朝日新聞に日曜版というのが登場して、まもなくの頃だったろうか。
 (他紙の事情は知らない)
 一面がほとんど全面カラー写真、という画期的なものだった。
 
 その全面写真で強く印象にのこったのが、厳冬の猛吹雪に耐えて立つ野生馬、寒立馬〔かんだちめ〕の姿をとらえたものだった。
 あれから、うっかりすると半世紀……。

 いや。いま、思い出したが、印象にのこる写真がもう一枚あった。
 九州である。鹿児島県西部、東シナ海に浮かぶ鄙びた島の風景は、甑島〔こしきじま〕
 その後、この島が故郷の方とは知り逢えたけれど、まだ島へは訪れたことがない。